「……愛梨……イったのか?」
頭を撫でながら、お兄ちゃんが訊いてくる。
私はぐったりとして、力のない声で応える。
「うン…………イった……みたい」
みたい、なんてものじゃない。
十五年の人生でいちばんの快感だった。
初めて迎えた、セックスでの絶頂。
こんなに、いいものだなんて。
こんなに、すごいなんて。
セックスって、すごい、素敵、最高。
「二回目でもうちゃんとイクなんて、感じやすいんだな」
からかうような口調。
恥ずかしい。
いやらしい女の子だって言われているみたい。
「ち、違う……もん。お兄ちゃんがうますぎるだけだもん」
拗ねたように唇を尖らせる。
実際にお兄ちゃんが上手なのかどうかは知らないけれど、女性経験の数を考えればそれなりのもののはず。ついさっきまでバージンだった中学三年生をイカせられるんだから、きっと上手なんだ。
「そりゃあ、まあ、それなりに自信はあるけどな」
素直に認めるお兄ちゃん。
その点は幸運だったかもしれない。
既に経験ずみの友達からは「初めての時は痛いだけだった」という声をよく聞く。だけど私は一回目から――痛かったけれど――気持ちよかった。
だけど、少し悔しくもある。
私はお兄ちゃんが初めてなのに、お兄ちゃんは私以外の女の子といっぱいしている。お兄ちゃんをこんなに上手にしたのは、私じゃない女の子たちなのだ。
子供っぽいヤキモチだってわかっているけれど、やっぱりおもしろくない。
「テクにはけっこう自信あるけど……でも、この感じ方はそれだけじゃないよな」
「……なぁに、私がエッチだって言いたいの?」
「いいや、俺たちの身体の相性が最高にいいってこと」
……、もう!
悔しいなぁ。
そんな、嬉しい台詞がさらっと出てきちゃうんだから。
でも、否定はできない。
きっと、相性はいいに決まっている。
ずっと一緒にいた、血のつながった兄妹なんだから。
もう……
もう……、大好き。
お兄ちゃんの顔にキスの雨を降らせる。
「……じゃあ、さ……相性のよさ、もう一回……確かめてみる?」
二回目の時、私はすごく感じてしまったけれど、あまりに気持ちよすぎて、先にイってしまったような気がする。夢中になっていたからはっきり覚えていないけれど、一回目の時のような中に出される感覚の記憶がない。
だから、もう一回、したい。
もう一度あの快感を味わいたいし、お兄ちゃんにもちゃんと射精してもらいたい。
「それは魅力的な提案だけど……さすがに今日はもう無理じゃないか? ……あそこ、痛いだろ?」
「う」
……確かに。
してる時は夢中になっているからあまり気にならなかったけれど、少し落ち着いてみるとかなりの痛みだ。
ひりひり、ずきずき、じんじん……鼓動に合わせるように痛みが響いてくる。
ここにもう一度挿れられて、激しくこすられて……想像してみると、けっこうきついかもしれない。確実に二回目よりも痛いはずだ。
お兄ちゃんに気持ちよくなってもらうため、と思えば我慢できないこともないだろうけど、それでもやっぱり痛いのはいやだし、私も気持ちよくなりたいし、お兄ちゃんとのセックスで「いやなことを我慢しながら」なんてしたくない。できることなら一緒に気持ちよくなりたい。
でも、このまま終わりなんて淋しい。
もっと、いちゃいちゃらぶらぶしたい。
……そこで、ふと思いついた。
「じゃあ……さ? えっと……その……ホントにするんじゃなくて……。えと、お兄ちゃんを気持ちよくさせてあげたいっていうか……。苦いっていうけどホントかなぁ、って……ちょっと、試してみたいなぁ……とか……」
初めてのことで、どう言えばいいのかわからない。あまり単刀直入な単語を口にするのは恥ずかしすぎる。
しかし、そこは相性最高のふたり。お兄ちゃんにはちゃんと伝わったようだ。
一瞬だけ「え?」という表情を見せたけれど、すぐに笑みを浮かべて、私の唇に人差し指を当ててきた。
「……ここで、してくれンの?」
「う……うん。さっき……口でしてもらって、すごく……よかったから。……お兄ちゃんも気持ちよくしてあげたいっていうか……ちょっと、興味あるっていうか……」
おちんちんを口にくわえる『フェラチオ』って行為。すごくいやらしいことに思えるけれど、だからこそ心惹かれるものがある。
お兄ちゃんとなら、いっぱい、いやらしいこと、したいから。
お兄ちゃんの唇は、舌は、私をすごく感じさせてくれた。私の口も、あんな風にお兄ちゃんを悦ばせてあげられるのだろうか。
試して、みたい。
そして、お兄ちゃんをいっぱい感じさせてあげたい。
「……嬉しいな。ぜひ、してくれよ」
頭を撫でられる。それだけで頬が熱くなった。
「…………じゃ、やってみる」
恥ずかしくて、視線を逸らしながら言う。
お兄ちゃんに覆いかぶさっていた姿勢から身体を起こし、下半身の方へと移動する。
「……っ!」
下半身を直視するのは初めてだった。お兄ちゃんが服を脱いだ時には、恥ずかしくて、まともに見ないようにしていたから。
生まれて初めて、大きくなったおちんちんを直視した。写真でもアダルトビデオでもなく、本物を、直に。
しかも、お兄ちゃんのものを。
ついさっきまで、私の中に在ったものを。
第一印象は「大きい!」だった。
なんとなく不思議な光景だ。女の子にはない、こんなに大きなものが、身体から生えているなんて。
大きくなって反り返っているそれは、間近に見るとやっぱり大きかった。これが中に入っていたなんて信じられない。痛かったのも当然だ。
これが私の中に入っていた。
これに、おまんこの中を激しくこすられた。
この先端の穴から、私の中に、射精、された。
考えただけでドキドキしてしまう。
赤黒くて、血管が浮き出ていて、見るからに固そうで、小さく脈打っているそれは、客観的に見れば恐ろしげというか、不気味というか、そんな姿をしている。
なのに、どうしてだろう。
すごく、愛おしく感じてしまう。
しかしすぐに、それも当然だと気がついた。これは、お兄ちゃんと私をひとつにつなぐための器官なのだ。
どきどき。
ドキドキ。
すごく、緊張している。
そして、興奮もしている。
おそるおそる手を伸ばして、触れてみた。
熱い、というのが最初の印象。三六度ちょっとという人間の体温よりも絶対に熱い。
そして、すごく固い。中に骨はないはずだけれど、そんなことありえない。人間の身体で、骨もないのにこんなに固いなんて、なにかの間違いではないだろうか。
手で包み込むようにして、そっと握ってみる。
やっぱり大きい。手からはみ出してしまいそう。
手のひら全体に、熱さを感じる。
そのまま、ゆっくりと上下に動かしてみる。おまんこに出し入れする時の動きを思い浮かべながら。
意外となめらかな感触だった。膨らんだ先端部……亀頭の部分は少し柔らかくてすべすべしている。この手触り、けっこう好きかもしれない。
手を動かしていると、お兄ちゃんが小さく声を上げた。一応、感じてくれているみたい。
だけど、手での愛撫は本来の目的ではない。
小さく深呼吸する。
少しだけ怖いと感じる気持ちを振り払い、目を閉じて、ゆっくりと顔を近づけていった。
唇に触れる、柔らかな感触。
肌とも、唇とも違う独特の触感。
私の中に入っていたためだろう、私の、エッチな蜜の味がした。
ソフトなキスをするみたいに唇と舌先が触れたところで、もう一度、小さく深呼吸。
思い切って、口いっぱいに頬ばった。
「――っ!」
口に含んでみると、外から見ていた印象よりもさらに大きく感じた。がんばって口を大きく開いていないと噛んでしまいそうだ。意図的に軽く歯を当てるというテクニックもあると聞いたことがあるけれど、初心者の私にそんな高度な真似ができるわけもない。
口の奥までくわえる。
先端は喉に当たっても、根元はまだ唇の外にあった。長さもかなりのものだ。これを全部口に含むのは、ちょっと難しいかもしれない。
とにかく、お兄ちゃんに感じてもらうためにがんばるしかない。
お兄ちゃんの体温と、心地よい弾力を口の中で感じる。
こうしていると、いくら固いとはいっても、骨のある指の感触とは違うとわかる。どんなに固くても、骨にはない弾力が感じられる。
唇でこするように頭を動かす。
……これって。
私も、けっこう気持ちいいかもしれない。
これまでの経験の中で、いちばん近い感覚はディープキスだろうか。もちろん、舌よりも何倍も大きくて、太くて、長くて、固い。だけど口の中を刺激されて気持ちいいという点では同じだ。
いや、大きくて固い分だけこちらの方が刺激が強く、それだけ気持ちいいともいえる。
口の、舌の、粘膜が、お兄ちゃんの粘膜と触れ合って、刺激される。それが舌であろうとおちんちんであろうと、その行為が気持ちいいことには変わりない。
考えてみれば、フェラチオというのは口をおまんこの代わりにした〈擬似的なセックス〉なのだ。
これまで、男の人のために「してあげる」行為だと思っていたけれど、実は違うのかもしれない。
それは擬似的なセックス。だから、挿れている男の人はもちろんのこと、挿れられている女の子が気持ちよくなるのも当たり前。おちんちんを挿れられたおまんこが気持ちいいのと同じこと。
私は口が気持ちよかったし、口の中のものがはちきれそうなほどに大きく固くなっているところを見ると、お兄ちゃんも感じているのだろう。
大きなものをがんばってくわえているせいか、口の中に唾液が溢れてきた。それをお兄ちゃんに塗るように舌を動かす。
これが、愛液の代わりの潤滑液。
濡れたおまんこと同様、口でする時もこうした方が気持ちいいに違いない。
一生懸命に口を動かす。
だけど、思ったようにはうまくできなかった。
ネットで見つけた無修正動画のAV女優のフェラチオに比べると、なんだかぎくしゃくとしてぎこちなくて、速く激しく動けない。
実際に試してみるまでは、もっと簡単なものかと思っていた。ただ口にくわえて頭を振るだけ……と。
しかしいざ実践してみると、これが意外と難しかった。噛まないように口を大きく開けつつも、舌や唇を強く当てて刺激しなきゃならないし、頭の動きも、考えてみれば普段はすることのない動作だった。
「……ごめん、私……へただよね」
理想と現実のギャップに、悲しくなってしまう。もっと簡単に、気持ちよくさせてあげられるともっていたのに。
「そんなことないぞ、初めてにしては十分うまいって」
「……そんな、見え透いたなぐさめなんかいらない」
思うように動けていないのが自分でもわかる。経験豊富なお兄ちゃんを満足させられるとは思えない。
「お兄ちゃんに気持ちよくなって欲しいのに……ぜんぜん、ちゃんとできないんだもの。動画で見たのはこんなんじゃなかったのに」
痛くて本番ができなくてお兄ちゃんを満足させられないのに、口でするのもへたなんて、どうしようもないヘタレだ。
みじめな気持ちになる。
お兄ちゃんのこと、気持ちよくさせてあげたいのに。
その想いだけは、誰にも負けないのに。
「愛梨は十分にうまいって」
大きな手が私の頭を優しく撫でる。
「第一、初体験の中学生がAV女優並みのテクニシャンだったら逆にひくって。中学生なら中学生らしく、初体験なら初体験らしく、初々しさで勝負すりゃいいじゃん。初めてにしては、ってことなら、愛梨は間違いなく上手だぞ。自信持っていいって」
「……ホントに?」
私はまだ半信半疑。お兄ちゃんは優しいから、私が傷つくようなことを言うはずがない。
「ホントにいいって。そもそも愛梨の目的はなんだ? 『俺を悦ばせること』だろ? だったら、うまいかへたかが問題じゃない。俺は今の状態を楽しんでるし、悦んでるし、気持ちいいし。動きが多少ぎこちなくたって、初体験の愛梨がそうやって俺のためにがんばってるところにすげー興奮する」
「……ほ、ホントに、こんなんでいいの?」
「ああ、そのまま続けて。もう少しでイキそうだから…………口の中に、出していいか?」
「……う、うん……。の、飲んでみたい……から」
「旨いもんじゃないけどな」
優しい言葉に安心して、口での奉仕に集中することにした。このまま続けていればイケるっていうんだから、その言葉を信じてがんばるだけだ。
唇と、舌と、内頬。とにかく口全体を使ってお兄ちゃんを包み込む。
唾液をたっぷり出して塗りつける。
初心者なりに精いっぱい、速く、リズミカルに頭を動かす。
「そう……いい感じだ……あぁ、その調子……」
髪を撫でるお兄ちゃんの手に、少し力が込められる。
息が荒くなってきている。
本当に、感じてくれているみたい。
嬉しい。
嬉しい。
嬉しくて、いっそう張り切ってしまう。
がんばりすぎて、時々、喉の奥まで入ってしまって「オエッ」ってなりそうになったりもしたけれど。
でも、がんばる。
生まれて初めてする、フェラチオ。
それは、口でするセックス。
口で、お兄ちゃんとつながっている。
口で、お兄ちゃんを感じている。
考えようによっては、普段から飲食に用いられている口は、まだほとんど使用経験のないおまんこよりも敏感な部分だ。
だから、すごく感じてしまう。
やればやるほどに気持ちよく、そして楽しくなってくる。
「もっと……強く吸うようにして」
髪を撫でていたお兄ちゃんの手が、頭を押さえるような形になる。
さらに、力が込められる。
私の動きに合わせて、腰が小刻みに上下する。
「んっ……んぅっ……くぅんっ…………んふっ、んんぅっ!」
そのまま、十数秒間。
「う……っ、出るっ!」
頭をぎゅっと掴まれて。
腰が力強く突き出されて。
喉の奥まで突かれて苦しくなったけれど、頭を押さえられているので吐き出すこともできなかった。
口をふさいでいるものが大きく脈打つ。
同時に、どろりとした熱い液体が噴き出してきて、一瞬で口の中いっぱいに広がった。
ねっとりと、舌に絡みつくような感触。
生臭い匂い。
「う……くっ……」
二度、三度、おちんちんが口の中で脈打つ。その度に粘液が噴き出してくる。
最初はびっくりしたけれど、すぐに理解した。
お兄ちゃん、イったんだ。
口の中に噴き出してきたものが、お兄ちゃんの精液。
私の中に、射精、している。
こんな風に出てくるものなんだ。
お兄ちゃんが大きく息をつく。
身体から緊張感が抜けていく。
頭を押さえていた手の力が緩められ、優しく撫でられる。
私はお兄ちゃんを口に含んだまま、口いっぱいに溜まった粘液を飲み下した。
ねっとりとした塊が、喉に引っかかるような感覚。
それでも一滴残らず飲み込んで、ごくんと喉を鳴らす。
「……ごめん、不味かったろ」
「…………おいしい」
ようやく口を離して、ふぅっと息をついた。
どうしてだろう。
味も、匂いも、舌触りも、けっして心地よいとはいえないはずなのに。
一般的な感覚では、美味しいはずなどないのに。
なのにどうしてだろう、こんなにも美味しく感じたのは。
頭がぼぅっとなるような、官能的な味だった。
それはやっぱり、お兄ちゃんのだからなのだろう。他の人のだったら、こんなもの絶対に飲めない。
お兄ちゃんのものだから、とても美味しくて、愛おしい。
あんなにいっぱい出るくらいに気持ちよくなってくれたのだと思うと、すごく幸せな気持ちになる。
「おいしい……よ? ……お兄ちゃんのじゃなければ飲めないくらい苦いけど……おいしい」
「バカ、そんな可愛いこと言うんじゃねーよ。また興奮するじゃねーか」
手のひらで軽く頭を叩かれる。そのまま、くしゃくしゃっと髪をかき混ぜるようにされる。
「……興奮、した?」
悪戯っぽく笑う。
「だったら……」
身体の位置を変えて、お兄ちゃんに寄り添うように横になった。
「…………もう一回、して?」
甘えた声で言う。
「して、って……あそこ、痛いんだろ?」
「うん、でも……口でしてたら、すごく気持ちよくて、私も興奮して……したくなっちゃった」
ちゅっと軽く触れるだけのキス。そのまま、頬をこすりつける。
口でしていて、すごく感じてしまった。
唇が、舌が、内頬が、すごく気持ちよかった。
あそこがびしょびしょに濡れているのがわかる。
したい。
気持ちよくなりたい。
少しくらい痛くても、もう、我慢できない。したくてたまらない。
「ちょっとくらい痛くても我慢するし……しよ? したいの、して欲しいの」
お兄ちゃんが、欲しい。
挿れて、欲しい。
「もちろん、俺ももっとしたいけどな。……でも、大丈夫か?」
「ん……なんとかなる、と思う」
破瓜の傷も、こすられすぎてすりむけたっぽい傷も、痛いけれど。
それで死ぬわけじゃない、と開き直る。
「じゃあ、さっきよりも優しくするから、な?」
「うん、お兄ちゃん、大好き!」
もう一度、今度は舌も入れたキス。
唇を離すと、お兄ちゃんは身体を起こして私の脚を掴んだ。
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