インタルード2 チョコレート娘 1 「ま、松宮先輩……。これ、受け取って下さい」  その女の子は、恥ずかしそうに頬を真っ赤に染めて、紅いリボンを結んだ包みを差し出した。  あー、またか……。  アタシは心の中で小さく溜息をついて、それでもにっこりと笑ってプレゼントを受け取った。 「あんた、二年生だよね? 名前は?」  顔は何度か見かけた記憶があるんだけど、どうにも名前が思い出せない。今日だけでこんな女の子を何十人か相手にしてるんだから、名前を知らない子も五人や十人ではないけれど。 「二年B組の、島田……和美です」  女の子は小さな声で言う。そう、和美ちゃんね。  二年生にしては小柄な子だ。由維よりちょっと大きい程度かな。そういえば、髪型もちょっと似てる。由維よりは、随分と内気な性格みたいだけれど。 「ありがとう、嬉しいよ」  アタシはそう言うと、和美ちゃんの肩に手を置いて、唇にちょんと軽くキスした。 「これは、お礼」 「え? あ、あの……」  和美ちゃん、驚いてる。  無理もないか。きっと、初めてだったんだろう。更に顔を朱くして俯いてしまった。  そんな様子が、とても可愛らしい。 「あ、あ、あの、し、失礼しますっ」  和美ちゃんはそれだけ言うと、回れ右をして走っていく。うーん、初々しいなぁ。  にやにやと笑って和美ちゃんの後ろ姿を見送っていると、いきなり、背後から声を掛けられた。 「見ーたーぞー、この女ったらし!」  ぎく!  一瞬、身体が強張る。  恐る恐る振り返ると、そこにいたのは沢村亜依。一年の時からずっと同じクラスだった、アタシのクラスメイトだ。 「み……見てた?」 「見てた」  腕を後ろに組んで、ふふっと笑いながら近付いてくる。 「相変わらずモテてるねー。去年よりずいぶん多いんじゃない?」 「まあ……ね」  今日は二月十四日、いわゆるバレンタインデーだ。  アタシは何故か、毎年女の子からたくさんのチョコを貰う。チョコレートは大好きだけど、一応女の身としては喜んでいいのかちょっとフクザツな心境だ。まあ、嬉しいといえば嬉しいんだけど。  おまけにアタシの誕生日が十六日ってことも手伝って、去年は、バレンタインに貰ったチョコやプレゼントの数は男子を差し置いて学年でトップ。  今年も……もう他人と比べるのが馬鹿らしいくらいダントツ。ぶっちぎり。  やれやれ……。 「はい奈子。私もあげる」  亜依が、後ろに隠していた物をアタシの前に突き出した。  小さなハートが散りばめられた包み紙に、ピンクのリボン。中身は考えるまでもないな。 「あ、あんたもかいっ?」 「なに驚いてンのよ? 毎年あげてるっしょ」 「あ……」  そういえばそうだったっけ。でも、亜依は結構可愛い顔しているし、男子にだってモテると思うんだけどなぁ。 「ウチのクラスの男子に義理チョコあげるくらいなら、奈子の方がすっとカッコイイもんね」  そーゆー問題だろうか? くれるっていう物は貰っておくけど。 「さて、そろそろ帰るか。チョコの大攻勢もだいたい終わったみたいだし……てゆーか、これ以上増えるとマジで持ち帰れないし」 「その前に……。ね、私にはしてくれないの?」 「え?」 「キ・ス」  あ……あのねー! 結局あんたもその趣味かいっ? うぅ、長年の親友に裏切られた気分だわ。 「義理チョコにはナシ!」 「あ、そーゆー冷たいこと言うんだ? 先刻のこと、由維ちゃんに言いつけちゃおうかなー?」  ぎくぎくっ!  それはまずい。 「ね? キ・ス・し・て」  アタシより十センチくらい背が低い亜依は、そう言うと上を向いて目を閉じた。  その仕草が、すごく可愛らしい。  うー、もう。わかったよ!  やればいいんでしょ。キスくらい、何べんでもしてあげるよ!  アタシは亜依の肩に手を掛ける。  あ……、なんだかドキドキしてきた。  目を閉じて、ゆっくりと顔を近づける。  そして、唇が触れた瞬間……  目が覚めた。 2  そんなわけで、アタシは一日憂鬱な気分だった。  アタシが落ち込んでるのもお構いなしに、チョコはどんどん集まってくるし。  はあ……。も、帰ろ。  ホントは亜依と一緒に帰る約束をしてるんだけど、亜依は生徒会の用事で遅くなってるし、これ以上学校にいたらマジでチョコが持ちきれなくなりそうだ。  まったく、何であんな夢見るんだろう。  それも、相手が由維ならともかく。  アタシ、絶対そんな趣味はない……と思う。とはいえ、最近ちょっと自信がなくなって来ているのは事実だ。由維や亜衣の、ちょっとした仕草がすごく可愛く思えてしまう。 「うぅ……あたしはノーマルだぞ」  自分に言い聞かせながら靴を履き替えていると、背後から近付いてくる足音がする。 「あの……松宮先輩……」  あぅ、まだ残っていたか。  この声には聞き覚えがある。  振り返ると、案の定そこにいたのは二年生の和美ちゃんだ。 「先輩、これ、受け取って下さい」  赤面症の気があるのか、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにチョコを差し出してくる。  こんな顔されたら、断れないよなぁ。  だから、アタシは笑って受け取った。 「ありがとう、和美ちゃん」  そう応えると、和美ちゃんは更に赤くなって俯いちゃった。  うぅ……、可愛いじゃない、この子。  夢の中では名前忘れててごめんね。  今朝の夢の影響か、思わず抱きしめたくなる衝動をアタシは必死に抑える。  アタシは、ノーマルだ!  そう、自分に言い聞かせて。  アタシの理性は僅差の判定で辛うじて勝利をおさめ、和美ちゃんは恥ずかしそうに立ち去る。  それと入れ違いに、別の足音が近付いてきた。 「奈子ったらどうして先に帰っちゃうの? 待っててって言ったっしょ」  ……いや、今日は何だかあんたと二人きりになりたくないんだよ、亜依。 「相変わらずモテモテだねー」  アタシの足下に置かれた、チョコがぎっしり詰まった二つの紙袋を見て、亜依は何だか嬉しそうに言う。 「まあ、人に好かれるのは悪い気しないけど、やっぱり、何か間違ってると思わない?」  重い紙袋を一つ亜依に押しつけてアタシは言った。 「女子校ならともかくさ」  白岩学園は、やや女子の比率が高いものの、れっきとした共学だ。 「いいんじゃない? ウチのクラスの男子と比べたら、奈子の方がずっとカッコイイもの」  あんたねー、夢の中と同じ台詞言ってンじゃないの。 「だから、はい、これあげる」  ああぁぁぁー、やっぱり……。  まぁ、毎年恒例ってのは事実なんだけど。  アタシは、やや引きつった笑みを浮かべながら亜依のチョコを受け取って、カバンにしまう。 「ねえ、奈子。これだけたくさんチョコ貰ったんだから、私にも少し分けてね」  私の紙袋を重そうに持ちながら、亜依は言った。 「いいけど……貰ったチョコは一通り味見することにしてるから、その後だよ?」 「相変わらず律儀だね。そういうところもモテる理由かな?」 「だって、悪いじゃない」  一人で全部はとても食べきれないけど、せめて一つずつは味見しないとね。 「ところで、今日は由維ちゃんは?」  校門を出たあたりで、亜依が訊いてくる。そう、普段なら登下校の時は由維がアタシの腕にぶら下がっているけど、今日はいない。  何故なら。 「先に帰って、ケーキ焼いてる」  アタシの誕生日は二月十六日だけど、実はアタシと由維の誕生日は二日違い。つまり、今日は由維の誕生日なわけ。  だから、いつの頃からか一緒に祝うのが習慣になっていた。今頃は、バレンタインとバースディを兼ねて、チョコレートケーキを焼いているはず。 「いいなー。由維ちゃんのケーキ美味しいもんね」 「だったら、亜依も一緒に来る?」  由維のことだもの、二人じゃ食べきれないくらい大きなケーキに決まってる。 「いや、今日は遠慮しとく。馬に蹴られたくないし。明日の帰りに寄るから、少し残しといて」 「あーのーねー、そういう関係じゃないって言ってるっしょ!」  アタシが睨んでも、亜依はへらへらと笑っている。 「向こうはそう思ってないよ。それに世間もね」  せ、世間も?   やっぱりアタシってそう思われてンの? 「奈子は違うって言い張るけどさ、確かめてみたことある? 由維ちゃんへの気持ちが、友情か恋愛か」 「確かめるって?」 「例えば……ギュって抱きしめて、気持ちいいとおもったら恋愛」  いいのか? そんな確認の仕方で……。  亜依って、その人が好きかどうか確かめるのに、いちいち抱きつくんだろうか? 「そういえば、由維ちゃんへの誕生日プレゼントはちゃんと用意したの?」 「もちろん、今年はとびっきりのヤツをね」 「とびっきり? まさか……」  なにを思ったのか、急に亜依が声を潜める。 「まさか、『私をプレゼント』とか?」 「するかぁぁぁっ!」 3  アタシが家に帰ると、準備はすっかりできあがっていた。  テーブルの上には、十五本の蝋燭を立てた大きなチョコレートケーキに、由維が昨日から煮込んでいたビーフシチューとサラダ。そしてシャンパンとジュース……ん? シャンパン? いいのか、中学生が。 「奈子先輩、ローソクの火を消してね」  エプロンを外しながら、由維が言う。  おや、今日は珍しく大人っぽい雰囲気のワンピースか。おめかししてきたね、由維。 「たまには由維がやったら? 今日はあんたの誕生日なんだし」 「私じゃ十三本もいっぺんに消せないもの」 「修行が足りんぞ」  そう言うとアタシは、腰を低く落として拳を構える。  そう、これがアタシたちの蝋燭の消し方。  気合いと共に突き出した正拳突きを、蝋燭の手前ぎりぎりで止めると、拳が巻き起こした風圧で十五本の蝋燭は一気に吹き消された。 「やったー、十五本成功!」  由維が手を叩いている。  ふふっ、アタシにかかれば軽いもんさ……って、端から見たらバカみたいかも知れないなぁ、アタシたち。でも、北原先輩だってこうやってるって言ってたし。  蝋燭の消えたケーキを、由維が手際よく切り分ける。チョコクリームがたっぷり、そして、スポンジの間にはスライスした苺が挟んである。  うーん、見るからに美味しそう。そう思って一口食べてみたら、やっぱり美味しかった。  また腕を上げたみたい。ホント、持つべきものは料理の上手な幼なじみだわ。 「どぉ? 美味し?」 「うん、最高」  よくできました、と頭を撫でてやると、由維は目を細めて嬉しそうに笑った。こういうところは可愛いなぁ。  ケーキだけじゃなく、シチューもサラダも美味しい。それにシャンパンも……。  未成年だけど、今日くらいはいいよね。ローラン・ペリエはアタシのお気に入りだし。 「奈子先輩、誕生日おめでとう」  食事が終わると、由維はピンクのリボンを掛けた紙袋を差し出した。  受け取って開けてみると、思った通り由維の手編みのセーター。  この子ってば、編み物も上手なんだ。細い毛糸で、とても丁寧に編んである。 「はい、これはアタシからのプレゼント。誕生日おめでとう」  アタシも、由維のために用意しておいたプレゼントを取り出した。金箔で飾られた小箱を、由維の掌に乗せてやる。 「うわぁ、キレイ!」  箱を開けた由維が歓声を上げる。箱の中から、金色のイヤリングを摘み上げた。 * * * 「ふぅん、恋人への誕生日プレゼント、ね?」 「もう、恋人じゃないって言ってるっしょ!」  アタシはソレアさんに向かって、拳を振り上げてみせた。  うーん、やっぱり相談する相手を間違えたかなぁ? でも、ファージに相談するよりはいいと思ったんだけど。  実はアタシ、こっちで珍しいアクセサリーとかを手に入れようと思ったんだ。 「それなら、ちょうどいいものがあるわ」  そう言ってソレアさんが持ってきてくれたのが、この小箱。  開けてみると、金色のイヤリングが収められていた。 「うわぁ……綺麗……」  アタシはイヤリングを一つ取り上げた。  材質は多分、本物の金だろう。髪の毛ほどの細い線で複雑な彫刻が施され、更に、1カラット以上はありそうな美しい宝石が輝いている。  ダイヤに少し似ているが、見つめていると、まるで中で炎が揺らめいてでもいるかのように、色が様々に変化する。 「綺麗……ステキ。これならきっと由維も喜ぶ。でも……高いんじゃない?」  こっちの世界でのアタシは、結構お金持ちではあるけど。 「まあ、売ったら相当の価値はあるわね。でも、それはファージと一緒に王国時代の遺跡を発掘していて見つけたものだから、ナコちゃんにあげるわ」 「え……いいの? ホントに? ありがとう!」  ソレアさんは、目を細めてふっと微笑んだ。 * * * 「へへ……どぉ? 似合う?」  さっそくイヤリングを付け、鏡を覗き込んでいた由維がこちらを振り返る。  うん、とてもよく似合っている。  由維にはちょっと大人っぽいかなとも思ったけど、今日は服も大人っぽいから、ぜんぜん違和感はない。  イヤリングと服のせいか、それともシャンパンで酔っているせいか、今日の由維はなんだかとっても可愛いく、そして色っぽく見える。 「よく似合ってるよ、由維……」  アタシは由維の肩を抱くと、耳元で囁いた。  唇が、耳たぶに微かに触れるくらいの距離で。  これって、くすぐったいけど気持ちイイんだよね。前に、ハルティ様に教わったテクニック。  案の定、由維はぴくりと身体を震わせると、耳まで真っ赤にして俯いた。  そのまま耳にキスする。 「あ……ん」  恥ずかしそうに、由維が身体をよじる。  鼻にかかった切ない声がたまらない。  アタシは由維の頭を抱き寄せると、今度はおでこにキスした。  次に、ほっぺたにキス。  その度に、由維は小さく声を立てる。 「奈子先輩……大好きっ!」  もうじっとしていられなくなったのか、由維がぎゅっとしがみついてきた。  アタシも、由維の小さな身体を抱きしめる。 「アタシも、大好きだよ……」  そう囁いてから、唇に軽くキスをする。 「今日の由維は、チョコレートの味がする」  先刻までチョコレートケーキ食べてたからね。 「奈子先輩だって……」  由維もそう言ってくすくす笑う。  アタシは由維の唇の周りをぺろぺろと舐めて、それからもう一度、しっかりと唇を重ねた。  今日のアタシ、どうしちゃったんだろう。自分から、こんなことするなんて……。 『ギュって抱きしめて、気持ちいいとおもったら恋愛』  不意に、先刻の亜依の言葉を思い出す。  それが本当なら……アタシ、由維を愛してるの?  こうして抱き合ってキスしていると、とっても気持ちいい。  できれば、ずっとこうしていたい……ような気がするな……。 4 「あ、あ、あぁぁ……」  翌朝、目を覚ますと同時に思わず頭を抱え込んでしまった。  昨夜のシャンパンのせいか、少し頭が痛いけど、それはまあいい。  アタシの隣には、由維が寝ている。  これもいつものことだけど……、お互いにしっかりと抱き合ったままってのは……ねぇ?  それでも唯一の救いは、二人とも服を着たままってこと。  ま、由維のワンピースのボタンはいくつか外れていたし、スカートはパンツが見えそうなほどにまくれ上がってはいたけれど、それでもどうやら最後の一線は越えていないらしい。  アタシはほっと安堵の息をついた。  ホント、昨夜のあの調子じゃあ、そのまま最後まで行っちゃうかと思ったけど。どうやら、その前に眠ってしまったらしい。  ずいぶん酔ってたし、完全に理性をなくしてたよ、アタシ。 「あぁぁ……」  だんだん記憶が戻ってきて、アタシはまた頭を抱えた。  どうして、あんなことしちゃったんだろう。  やっぱり、お酒のせいかなぁ?  普段なら絶対こんなことないのに、昨日の由維は、なんだかとっても可愛く見えて。  アタシは、もう一度由維の顔を見た。  幸せそうな顔で眠っている。  うぅ……やっぱり可愛いなぁ。  由維を起こさないようにそぅっとキスをしようとして、ふと気が付いた。  由維ってば、アタシがあげたイヤリング付けたままだ。このイヤリング……あれ? 「……っ!」  アタシは思わず大声を上げそうになって、手で口を押さえた。 * * * 「ソレアさんっ!」  アタシは、ソレアさんの屋敷の、居間の扉を叩きつけるような勢いで開いた。ソレアさんはちょうど、朝のお茶を楽しんでいるところだった。 「あら、おはようナコちゃん。今朝はずいぶん早いのね? 来るとしても、もっと遅いかと思ってたけど」  ソレアさんは、意味ありげな笑みを浮かべる。そう、あのイヤリングをくれた時も同じ笑みを浮かべていた。  どうして、すぐに気付かなかったんだろう。  ソレアさんは、魔法で人の心を操ることができるほどの力を持っているということに。 「気に入ってもらえたかしら?  私からユイちゃんへのプレゼント」  あぁ……やっぱり……  ……うん、きっと由維は喜んでたと思う……けどさ……。  でも。  アタシは怒ってるんだからね! 初版あとがき  はっはっは……(どことなく、乾いた笑い)  もう笑うしかない。  とゆーわけで、暴走しまくり百合シリーズ第二弾です。  登場人物も、作者も暴走してます。最近、サーファーズパラダイスのジャンルに『百合』を追加してしまったし(笑)。  何だか、それ以来アクセス数が伸びているような気がします。やっぱり、みんな好きなんですねー。  でも、一応女性読者もいるらしいので、やりすぎないように気を付けましょう。今更手遅れかも知れませんが。  それとも、次回は女性向けにJUNEモノにしましょうか?(思わず想像してしまった。やっぱりヤだなぁ)  ところで、今回は『光の王国』シリーズとしては初めて全編一人称になっています。あまりにもばかばかしい内容なので、こうでもしないと書けません。(だったら書くなって)  今回は『わたしだけ……』以上にふざけた作品になっていますが、長編を書き上げて燃えカスになっていた北原の、リハビリということで大目に見て下さいな。  それでは、次回はまっとうな(?)番外編でお会いしましょう。 一九九八年 二月 北原樹恒 kitsune@nifty.com 創作館ふれ・ちせ http://plaza4.mbn.or.jp/~kamuychep/chiron/ 第二版あとがき  うーん……。  今読み返してみても、やっぱり浮いてますねぇ、この話。『光』シリーズでは唯一の、そしてキタハラ作品としても珍しい口語体一人称のせいですかね?  『レイナの剣』の後ということで、奈子の性格も微妙に変化を見せ始めてますし。しかし、最初に顕れた変化がこれって……(笑)。  初版あとがきでは「最近、サーファーズパラダイスのジャンルに『百合』を追加してしまったし」なんて悠長なことを言ってますね。いまや「ふれ・ちせといえば百合、キタハラといえば百合」は世間の常識(?)となっていますが(笑)。やっぱり、この辺が転換点なんでしょうか?  さて、次の『光』書き直しは、いよいよ三百枚超の長編『ファ・ラーナの聖墓』……と思っていたのですが、いま見直してみたら、先に『リューリィ・リン』がありました。うーん……全話の修正が終わるまでには、まだまだ遠いですねぇ。 二○○一年十月 北原樹恒 kitsune@nifty.com 創作館ふれ・ちせ http://plaza4.mbn.or.jp/~kamuychep/chiron/