と、ゆーわけで改訂版です。
この作品の初版『異界の戦士』は、一九九七年の三月〜五月頃に書いたものなので、約三年ぶりに書き直したことになりますね。今回、ストーリィに大きな変更はありませんが、文章は九割以上書き直しています。
なぜ今になって書き直したのか。それを説明するためには、初版を書いたときのことを簡単に説明する必要があります。
実は、私はそれまで、まともな小説というものを書いたことがありませんでした。それ以前の私の創作活動は、マンガが専門でしたから。小説らしきものといえば、短編版の『ファ・ラーナの聖墓』(『北原のみぢかいお話』に収録)があるくらいで。
私は小さい頃から読書は好きでしたけど、こういったいわゆる「ライトノベル」は、それまでほとんど読んだこともないんですよ。数少ない例外は、中学〜高校時代に火浦功と新井素子を読んだくらいでしょうか。
しかし最近になって、いろいろな事情でライトファンタジーを読むようになり「そうか、こういう小説もアリなのか。じゃあ自分でも書いてみよう」と、なんの脈絡もなく思い立ったのでした。
小説を書いたことはなくとも、小さい頃から「お話を考える」のは好きだったので、それから先は早いものです。ストーリィは以前、パソコン用アドベンチャーゲームを作ろうとしていたときのシナリオをベースにして、いろいろと手を加えたものです。
背景となる世界設定は、高校時代からマンガやRPGのシナリオ用にあたためていたものを流用しました。作中に出てくる「王国時代」の物語がこれにあたります。
主人公は、中学〜高校時代にマンガに描いていた格闘少女をアレンジして使いました。その格闘少女とは、『光の王国』の二話や四話にも登場する「北原美樹」だったりします。
そんなわけで、良くいえばそれまでの創作活動の集大成、悪くいえば思いつきの寄せ集めの『光の王国』が生まれたわけです。
そうして書き上げた処女作は、最初ニフティ・サーブ(現アットニフティ)のSF・ファンタジーフォーラムで公開しました。当時はまだ、自分のホームページは持っていなかったので。
タイトルが『光の王国』となったのも、それが理由です。執筆中のタイトルは『遙かなる光の大地』というものでしたが、この長いタイトルは、ニフティのフォーラムでの、発言タイトルの制限長に収まらなかったのです(笑)。
こうして書き始めた『光の王国』ですが、当初の構想としては、完全な一話完結タイプのシリーズで、もっとコメディ色の強いものでした。しかし、二話『復讐の序曲』〜三話『黄昏の堕天使』が思っていた以上にハードな展開になり、もうコメディ路線に戻せなくなってしまったのです。
この作品を書いている当時、だいたい五話分くらいの構想が頭の中にありましたが、四話以降は今とまったく違う内容でした。今だから白状しますが、『光の王国』の最終回までのおおよその道筋が決まったのは、第三話を書いている最中なのです。
そんなわけで、途中での路線転換が響いて、第一話には後の話と矛盾する部分があったり、張っておくべき伏線が張っていなかったりして、書き直しの必要に迫られたというわけです。
だけど書き直しの一番の動機は「処女作だけに、あまりにもひどい文章だから」かもしれません(笑)。どうも、第一話だけ読んで見捨てる読者が多いようなので、なんとかしようと……。
ただ、ストーリィをあまり大きく変えるわけにもいかなかったので(それをやると、今度は二〜三話を直さなきゃならなくなりますから)、「質の向上」は十分に達成できませんでしたが。まあ、仕方のないところでしょう。
では、初版を読んでいる読者のために、変更点を簡単に説明しましょう。
まず、初版にはない序章『天と地の狭間で』が追加されています。だけどこれ、「第二部までの『光』は全部読んでいる」という読者にも意味不明の内容でしょう。この序章の意味が明らかになるのは、最終話です(笑)。つまりこれは、シリーズ全体の序章というわけ。
そして一章。いきなり由維の出番です。一章に限らず、全体に初版より百合度がやや高め。これは、三年前と今の、私の作風の違いでしょう。今回、奈子×由維のシーンは書いていてつい暴走しそうになりました。「この頃の奈子は、まだ由維に対する恋愛感情に気付いていない」ということをつい忘れそうになるんですね。
二章は、変更点の多い章です。大事な伏線を張って、そしてあまりにもご都合主義でRPG的な部分を削除。奈子の最初の闘いの相手が変わっています。
そして三章、初版の二章を二〜三章に分けたものですが、文章はかなり変わっているものの、ストーリィにほとんど変化はありません。
四章は、初版の三章の前半部分に相当します。最初の夜、ファージが王国時代の話をする部分が、台詞が長すぎて気に入らなかったので、大半を地の文に書き直しました。
五章は、初版の三章後半です。あまり変わっていません。転移魔法に失敗するシーンがカットされていますが。
六章も、そう大きくは変わっていません。文章の表現を全体的に見直したくらい。
そして終章。一番の変更点は、ファージとのキスシーンでしょうか(笑)。
そして全体としては、章の構成が四話以降に定着したスタイルとなっています。つまり、序章は奈子が登場しない王国時代の話などで、一章と終章のラストは奈子×由維の百合シーンという(笑)。最近では、意図的にこういう構成にしてるんです。
二話〜三話もこの構成になっていませんが、あれは前後編みたいなものですからね。
それと、大量に見つかった記述ミスを修正しました。誤字ではなくて、名前の表記ミス。
ファージの台詞の中に、「ナコ」ではなくて「奈子」という表記がかなりあったんですね、この頃は。今は気をつけてチェックしているので、この手のミスはかなり減っていますが。
まあ全体としては、多少レベルアップしたんじゃないかと思っています。
では最後に恒例、これからの予定を。
この改訂版と平行して、番外編3『紅の花嫁(仮)』を執筆中です。最近出番のない人たちの、短いお話。
そして『光』以外の新シリーズ、『一番街の魔法屋』も執筆中です。ジャンルは、近代女子校ファンタジック百合コメディ…なにそれ?(笑) 一言でいえば、よ〜するに「美少女活劇」です、いつもの。但し、これの公開は今年の十二月の予定。理由は…わかる人はわかりますね。
そして、これらの作品を書き上げたら、いよいよ皆さん待望の『光の王国』第三部が始まります。第二部が終わって半年、かなり充電もできましたし、この改訂版を書いていて思ったけど、やっぱり『光』の本編は、書いていて楽しいんですよ。
とゆ〜わけで、本編第八話『レーナの御子』は、夏までには公開の予定です。お楽しみに。
二○○○年二月 北原樹恒
kitsune@mb.infoweb.ne.jp
創作館ふれ・ちせ
http://plaza4.mbn.or.jp/~kamuychep/chiron/
ここに『光の王国1・異界の戦士』の第三版をお届けします。
この作品の初版は、キタハラが初めて本格的に書いた小説です。それが一九九七年の春のこと。
それから三年半、いろいろなことがありました。ありましたが、それを書くと長くなるので割愛(笑)。とにかく、いつの間にか『光』はオンラインファンタジー小説としては有数の存在になっていました。
で今回、CD―ROM版『光の王国』の出版に当たり、すべての小説をもう一度推敲し直すことにしました。『異界の戦士』は二○○○年一月にも大幅に書き直しているので、修正個所はそう多くはありませんけど。誤字とか、細かな文章の修正とか。
二○○一年夏のCD―ROM発売に向けて、『光』全話修正プロジェクトはまだ始まったばかり。気の遠くなるような作業です。特に、二〜五話あたりがね。古い作品なので、直さなきゃならない箇所が山ほどあるんですよ。最近の七〜九話あたりは、そうでもないんですけど。
本当に、来年夏までにすべての作業が終わるのでしょうか? 旧原稿の修正の他、最終話や書き下ろしの執筆、ページのデザイン等、やることは山ほどあります。
さて、あなたがこれを読んでいるのは、いったいいつですか?(笑)
二○○○年十一月 北原樹恒
kitsune@nifty.com
創作館ふれ・ちせ
http://plaza4.mbn.or.jp/~kamuychep/chiron/
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