あとがき


 ごきげんよう、北原です。
 久々の長編、『魅魔竜伝』小説版をお送りいたします。
 これを読むほとんどの方はご存じでしょうが、創作百合系ジャンルで人気の同人サークル『桜井家』の同名コミックの小説版です。「原作」じゃありません。あくまでも「小説版」。
 ということで、『魅魔竜伝』誕生のエピソードを簡単に紹介しましょう。

 桜井家のタキさんから「ファンタジーものの原作を書いて欲しい」と頼まれたのが、二○○三年の夏コミの初日。東京は新橋駅近くの居酒屋で、かなさんを含めて三人で飲んでいた時のこと。
 酔ってた勢いで安請け合いしましたが、頼んだタキさんも、その後、あんな苦難が待ち受けているとは夢にも思わなかったでしょう。
 簡単な打ち合わせで基本路線は「剣と魔法系」「アクション」「百合」「えっちアリ」と決まりました。で、ネタ帳にあった十八禁ファンタジーもののネタを百合に焼き直したのが、『魅魔竜伝』の原型です。
 コミケ後、半月ちょっとでプロットとキャラデザインが決まり、その後はネーム〜下描き〜ペン入れ〜仕上げという(主にタキさんの)長い長い作業。二○○四年一〜二月の桜井家の修羅場っぷりは、ご存じの方も多いかと思います。ご存じない方は、『サクライケ』の日記や桜井家通信をお読みになるとよくわかるでしょう。
 それでもなんとか(奇跡的に)二月のコミティア67で初売りにこぎ着けることができました。
 それはすべて、執筆と仕事以外のすべてを捨てて原稿に立ち向かったタキさんの努力と、無償で背景のほとんどを描いてくれた、今は亡き澄乃はな氏の献身のおかげといっていいでしょう。この場を借りて、はなちゃんのご冥福をお祈りします。

 ……で、小説版の執筆作業はコミティア後に開始しました。あえて、コミック版が完成してから取りかかったのです。
 自分のアイディアがコミック化されたその作品を読みながら小説を書く――滅多にできない貴重な体験ですからね。
 あくまでもコミック版をベースに、ページの都合その他の理由で省略されたエピソードや第二話以降の伏線を加筆したのがこの小説版。単に自分のプロットを小説にまとめただけではなく、タキさんのアイディアが含まれたコミック版のノベライズでもあるわけです。
 で、コミック版は一冊読み切りですが、小説版は全三話構成となる予定です……が、二話、三話がいつ頃公開できるかはまったくの未定。なにしろまだ『一番街の魔法屋』の二話も書いてませんし。
 しかもこの後の魅魔竜伝は、さらに濡れ場が増える予定で、はたして全年齢向けで公開できるかどうかも微妙なところ。ひょっとしたら『〜残滓〜』の方に掲載することになるかもしれません(笑)。ま、気長にお待ちくださいな。
 あ、そうそう。もしも第二話を書くとしたら、今回入れられなかった「踊れ」のエピソードをぜひとも入れたいですねぇ(笑)。

 では、恒例の……いや、最近あまり恒例じゃなくなっていた次回予告。あとがきで、次の長編のはっきりとした予告をできるなんて、いったいいつ以来でしょう?(苦笑)
 ということで、もしかしたら間に短編が一本入るかもしれませんが、長編については晩夏〜初秋頃、いよいよ『竜姫の翼 〜北極航路邀撃戦隊〜』をお届けします。
 異世界ファンタジーでも現代ものでもない、これまでのキタハラ作品とはひと味違う設定の近代戦争物。
 ジェット戦闘機が実用化されたばかりの時代に、空軍のパイロットとなった少女が主人公の、空戦美少女活劇の傑作です。『光の王国』が好きな読者には特にオススメの一作。原稿用紙四○○枚近い、読み応えたっぷりの長編。
 ファンの期待は裏切らないはずなので、どうぞお楽しみに。

二○○四年六月 北原樹恒
kitsune@nifty.com
創作館ふれ・ちせ
http://hure-chise.atnifty.com/
サクライケ
http://www2.to/sakuraike2000/


目次に戻る

(C)Copyright 2004 Kitsune Kitahara All Rights Reserved.