あとがき


 ごきげんよう――とあとがきを書き始めるのもずいぶんと久しぶりです。

 ……ということで、本っ当に久々の長編書き下ろし、『魅魔竜伝 ‐弐‐』をお届けします。
 文庫一冊相当の書き下ろしって、ひょっとして『竜姫の翼』以来でしょうか?
 いやはや……いくらなんでもサボりすぎです。『魅魔竜伝 ‐壱‐』の公開も三年近く前になりますから、昔は『光の王国』を年二話以上のペースで書いていたなんて、今となっては信じられませんね(苦笑)。
 とはいっても書くのが遅くなったわけではなく、単に執筆時間が短くなっただけなんですが。
 今年の冬は心を入れ替え、ゲームとかを一切せずに原稿に向かったおかげで、昔並みのペースで書くことができました。

 そんなわけで『魅魔竜伝』完結編です。
 当初、全三話構成なると考えていたのですが、書いてみたら何故か全二話でした。一話すっ飛ばしたわけではなく、二〜三話と想定していたエピソードを再構成して一話にまとめたのが本作になります。
 で、本作の序章部分が、実は『魅魔竜伝』の元ネタ部分。元々、コンル&ラウネの男女十八禁モノだったネタを、『百合』という大前提があったコミック版向けに性別を変えて、ラウネ役をカンナに置き換えたのが『魅魔竜伝』というわけです。

 ところで、今回の執筆中に感じたのが、『弐』は『壱』よりも書きやすいということ。前作は読み返してみると、なんとなくぎこちない部分が多いんですよね。多分、コミック版を意識しすぎて自分らしさを出し切れなかった結果だと思います。カムィもカンナも、まだ自分のキャラになりきっていませんでしたし。
 その点では、『弐』の方が自然に書けるのは当然のこと。
 とはいえ、『魅魔竜伝』はどちらかといえば私にとって書きにくい作品です。
 他の作品とは文体とか言葉の制約とか、少し違うんですよ。
『光』や『竜姫』と比べてはっきり違いがわかるのが「カタカナの外来語は使わない」という制約。作風や世界設定と雰囲気が合わないのです。
 同様の理由で度量衡や時間の単位も使用していません。いちいち解説が必要となるオリジナルの単位系を使うのは嫌い、という話は以前どこかで書いたような記憶がありますが、ファンタジーやSFでも、実在の単位系を使って違和感のない作品、違和感のある作品があって、魅魔は明らかに後者でしょう。竜姫や一番街なら、メートル法を使っても違和感ないんですけどね。
 カタカナ語を使わない代わりといってはなんですが、カンナの台詞はやたらとカナ表記が目立ちます。
 元々はコミック版の名残ですが、漢字というのはそれ自体が意味を持つため、敢えてカナ表記にすることで「その単語を人間と同じ意味にはとらえていない」ことを視覚的に表せる点が気に入ってます。
 魔物の台詞以外でカナ表記が使われるのは固有名詞だけですが、これは例によってすべてアイヌ語由来。
 私は最初、普通に西洋っぽいカナ名前を考えていたのですが、コミック版の打合せ段階でアイヌ語系となりました。
 なので、『弐』の新キャラもアイヌ語系で統一しています。原語の意味も作中に書いてあるとおりです。
 固有名詞に関してもうひとつのこだわりは、前作も本作も『地名』が出てこないこと。これはまあ深い理由はなくて、「なんとなく」なんですが。
 
 話は変わってカムィについて。
 カムィって、北原キャラ随一のツンデレですよね(笑)。
 それに次ぐのが『MI・KU・MI』の岡村美鳩と、対エイシスの奈子やリューリィでしょうか。でも奈子は他の相手(ハルティとか)には素直ですし。
 最初から最後までツンデレ道を貫いたカムィは、それはそれで可愛いな、と思います(笑)。
 カムィといえば悩んだのが第六章のラストシーン。
 本当はあそこで4コマ版のネタ、「お手」とか「踊れ」をやりたかったのですが、さすがに唐突すぎるということであのような形で妥協しました。
 あと、タシロとの絡みを克明に書くかとか、マウエに陵辱されるシーンを入れるかとか、終章最後にカムィ攻のえちシーンを入れるかとかも悩みました。結局、表の作品としては蛇足ということでそれもボツ。特にマウエとの絡みは、前作のイメルと同じパターンになってしまいますし。
 カムィ攻だけはカーテンコールで書こうかとも思いましたが、少々エロ過ぎるのでどうしたものかと思案中。
 なにしろ魅魔の血は、魔物にとってはどんな強力な媚薬も問題にならないくらいに『効き』ますから、ヌルい描写はできないのです(笑)。

 さて。
 そんなわけで、カンナ×カムィの『魅魔竜伝』はこれで終わりですが、いずれ、違うキャラ、違う時代、違う世界で、まったく違った『魅魔』の物語を書きたいと考えてます。
 早ければ今年中に取りかかるかも。

 それでは最後に次回予告…………といっても、これが公開される頃にはそろそろレースシーズンも開幕間近。執筆時間が取れるかどうかはまったくの未知数です。
 一応、次のふれ・ちせ作品は、本邦初の自転車ロードレース百合小説の中編書き下ろしを予定しています。早ければシーズン中に公開できるかもしれません。
 てぃーぽっとの方はまったくの未定。
 次の長編は、早くても次のシーズンオフでしょうか。順番からいけば『竜姫』の外編になるなんですけど、いまいちテンションが上がらないんですよねー。竜姫シリーズ、特に次回作は百合度&えち度が低いので(笑)。
 
 それでは、また、次回作でお会いしましょう。
 

二○○七年三月某日 北原樹恒
kitsune@nifty.com
創作館ふれ・ちせ
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