だから姉にはかなわない (後編)


「なによ。あれだけ出したのに、ぜんぜん大っきいまんまじゃないの!」
 少しも静まる様子もなしに隆々と天井を向いている俺のモノを見て、姉貴は半分呆れたように言った。
 そんなこと、俺に言われたって困る。これは俺の意志とは無関係に行動する生き物なんだから。
 正確に言えば、姉貴のフェラチオでイったあと、少し静まる気配は見せた。
 だけど、顔にかかった精液を舐め取る姉貴の仕草がすごくいやらしくて、それを見ていたらすぐに勢いを取り戻した……っていうか、かえって先刻よりも元気になってしまったくらいだ。
 だから、俺に文句を言われたって困る。半分は姉貴のせいだ、って言いたいけど、そんなことを言ったら怒られるのは目に見えているから黙っていた。
「……慎くんって、けっこう凄いんじゃない? 精力絶倫だね」
 ビクンビクンと痛いくらいに脈打っているペニスを見つめて、姉貴が言った。
「そ、そうかな……?」
 ゴクリ……姉貴が喉を鳴らして唾を飲み込んだ。
 少し間をおいて、姉貴にしては珍しく躊躇いがちに口を開く。
「……お姉ちゃんに、入れてみる?」
「え? えっと、その……」
「正直に言ってごらん。お姉ちゃんと本番したくない? お姉ちゃんの……中に、入れてみたくない?」
 姉貴は、指で自分の割れ目を広げて、挑発するような目で俺を見た。
「そ……そりゃ、入れてみたい……けどさ……でも、姉弟で……そんな……」
 俺だって健康で童貞の高校生、セックスしてみたいに決まってる。だけどこれは、これだけは越えちゃいけない最後の一線だと思う。
「いまさらなに言ってンの。じゃあ、姉弟でエッチな写真撮ったり、フェラチオするのはいいわけ?」
「いや、でも……そんな……」
「もう! ぐずぐずしないでそこに横になりなさい!」
 ベッドを指差して姉貴が怒鳴った。俺は慌ててにそれに従う。小さい頃からの条件反射で、姉貴に強く言われると逆らえないんだ。
 ベッドの上に行儀よく仰向けになると、姉貴の手がペニスを握った。
「もぉ、まだこんなに固いんだから……」
「……ごめん」
「この欲張りなおちんちんを、お姉ちゃんが満足させてあげる」
 姉貴は愛おしそうに先端にキスすると、ちょっとだけそれを口に含んだ。
 もうこれ以上はないってくらいに固く、大きくなってるんだからそんな必要はないって思ったんだけど、唾液で濡らして入れやすくするためだったらしい。
 すぐに、ペニスを握ったまま俺の上にまたがって、あそこの入口に当てた。
 唾液に濡れた亀頭、愛液に濡れた割れ目。二つの粘膜が触れ合う。
「慎くん……あんた、初めて?」
「……うん」
「初めてがお姉ちゃんでも、いい?」
「……うん、いいよ」
 っていうか、この状況下で「やだ」なんて言えるチェリーボーイはこの世に存在しない。
 俺がうなずいた瞬間、姉貴がすとんと腰を落とした。
「あぁっ!」
「はぁぁぁぁぁっっ!」
 ふたり同時に、悲鳴に似た声を上げる。
 俺の童貞は、一瞬で姉貴に奪われてしまった。
「あぁ……んっ! ん……ぁ……んふぅ……すご……すごい……突き上げてくるぅ……」
 奥まで入っている。俺のペニスが、根元まで姉貴の中に飲み込まれている。
 俺は今、姉貴とセックスしているんだ。
「は……ぁ……あぁっ! ねぇ、お姉ちゃんの……中、気持ち……イイ?」
 瞳を潤ませた姉貴が聞く。
 小刻みに腰を動かしている。
 中は熱くて、すごくヌルヌルで、まるで絡みついてくるみたいだ。
 俺のペニスは先っぽから根元まで、柔らかな粘膜に包みこまれて擦られている。
「イイ……すごく……いいよ! も、もうっ!」
「あぁ……! んふ……ぅ……ん!」
 イってしまった。
 情けない話だけど、姉貴がちょっと腰を動かしただけでイってしまった。
 だけど仕方ない。入れる前から、もう限界ギリギリだったんだから。
 俺は、姉貴の中に発射してしまった。
 ドクン、ドクン。
 姉貴の中で脈打っている。
「ん……ぁん、あ……ぁん!」
 姉貴が悶えるように身体をくねらせる。
 その動きに合わせて、キュッキュとあそこが締めつけてくる。
 十分に濡れていた膣内に俺の精液が加わって、より一層ヌルヌル感が増しているようだ。
 そのせいだろうか。俺のペニスはまだ全然勢いを失わない。
「んふ……あ、あぁ! んん……あん!」
 姉貴もそれはわかっているみたいで、休むことなく動き続けている。
 その時になって俺は、大変なことに気が付いた。
「やばい! 中で出しちゃった!」
「大丈夫。今日は安全日」
 俺の狼狽ぶりが可笑しかったのか、口元をほころばせて姉貴が言う。そして、上体を前に倒すと俺の唇にチュッとキスをした。
 俺は、安堵の息を漏らす。
「そう……よかった……運が良かったな」
「偶然じゃないよ。なんで今日を選んだと思ってるの……ん、あぁっ!」
 姉貴がまた身体を起こす。自分の体重でペニスが奥に入って深い部分を突かれたのか、身体を仰け反らせて切なげな声を漏らした。
「え? 母さんがいないからじゃないの?」
「……それもあるけど……んふ……、なにより、今日が……あ、安全日だから……」
 腰を振りながら、途切れ途切れに言う。
 俺は驚いていた。わざわざ安全日を撮影に選んだ……ということは……。
「え……、それってつまり……姉貴は最初から、俺と……セックスしようと思ってた?」
 ってことはつまり……つまり……姉貴は……俺のことを……。
「な〜に言ってンの、バカ!」
 姉貴は一度動きを止めると、ベッドに手を着いて俺の顔を真上から見下ろした。
「美しいお姉さまの色香に迷ったあんたが、キレて襲ってくるかもしれないと思って、念のため安全日にしておいたの。やっぱり正解だったわ」
 ……俺のこと、全然信用してなかったわけね。
 でも、別に俺が襲ったわけじゃないぞ。そりゃあ……あのまま撮影を続けていて、最後まで理性を保てたかどうかはわからないけれど。
「それにしても……慎くんの、元気だね。続けて二回も出したのに、まだ元気いっぱい……すごい……固いの」
 姉貴がまた腰を動かし始めた。
 動きはどんどん速く、そして激しくなっていく。
 前後に大きく、擦り付けるように腰を振る。
 姉貴が腰を前に突き出すときに、ペニスの下側が擦られるのがすごく気持ちいい。
 腰の動きに合わせて、姉貴の胸が揺れている。
 前後の腰の動きは、徐々に縦長の楕円を描くような動きに変化していった。姉貴が腰をくねらすと、俺のペニスは姉貴の中をかき混ぜることになる。膣の粘膜が絡みついてくるみたいだ。
「あぁっ! はぁっ! あぁぁん! あんっ、あんっ、あぁっ! あんっ! あぁ〜っ! あ〜っ!」
 よくもあんなに動けるって感心するくらい、激しくて速い動きだ。姉貴ってば、普段からサンバの練習でもしてるんじゃないのか?
 姉貴の胸が弾むように揺れている。
 髪を振り乱して感じている。
 汗が、ぽたぽたと俺の胸や腹に落ちてくる。
「イイよっ、イイッ! 慎くんのおちんちん気持ちイイッ! あぁっ、あぁぁっ! 感じちゃうぅっ!」
 姉貴は夢中で俺の手を取ると、自分の胸に導いた。俺はされるがまま、揺れる乳房を掴んだ。
「そう! おっぱい触って! もっと、もっと強く!」
 そう言われて、最初は遠慮がちだった手に力を込めていく。しまいにはちょっと乱暴すぎるかなってくらいにギュって掴んでしまったけど、姉貴は痛がる様子もなく、むしろ悦んでいるみたいだった。
「イイィ〜っ! イイのっ! イイのぉっ! あぁぁ、あぁぁぁっ!」
 二人の結合部はもうヌルヌルというよりも、びちゃびちゃというか、ぐちゃぐちゃというか。腰を振るたびに飛沫が飛んでるんじゃないかってくらいに濡れている。
 じゅぶ……ぬちゃ、くちゅ……といやらしい音が響く。
 ペニス全体が、ヌルヌルの柔らかなおまんこに包み込まれて、擦られて。
 気持ちいいなんてもんじゃない。気の遠くなるような快感だ。
「もう、もう……俺っ! 姉貴ぃっ!」
 限界だ。もう堪えられない。
「待って! もうちょっと……もうちょっと……あぁっ! あぁっ、お姉ちゃんも……お姉ちゃんもイクからぁぁぁっっ!」
 小柄な姉貴が、俺の上で跳ねるように腰を上下に動かしている。
 一度腰を浮かして、また根本まで一気に沈み込ませて。
 上体を仰け反らして、大きなストロークを繰り返す。
「イクぅっ! イクぅっ! イっちゃうぅぅっっ! イイぃっ! イイぃぃっ! あぁぁぁぁっっ、イクぅぅぅっ!」
 姉貴の叫びを聞きながら、俺は射精していた。
 思いっきり、すべてを解放するように。姉貴の口でイってしまった時に負けないくらいたくさん。
 ビクビクと脈打つペニスを、膣の粘膜が痙攣するように締めつけてくる。精液を搾り取ろうとするかのように。
 姉貴は最後の叫びをあげながら、腰をくねらしている。
「ぁぁぁぁぁぁっ………っ、……ぁ!」
 肺の中の空気をすべて吐き出すと、力尽きたかのように俺の上に倒れてきた。
 全身汗びっしょりで、小さく震えている。
 俺は全身の力が抜けていくのを感じていたけど、姉貴の身体に腕を回してぎゅっと抱きしめた。
 フェラもしてもらったしセックスもしたのに、まだ一度もこうして抱いていなかったことに気付いたから。
 姉貴の身体は柔らかくて、思っていたよりもずっと小さく感じた。
 考えてみれば当然だ。身長百五十五センチの姉貴は、俺より二十センチくらい小柄なんだから。
 俺が精神的に劣勢に立っているから、実際よりも大きく感じるんだろう。でもこうして抱いていれば、姉貴は実物大の、胸以外は小柄な女の子だった。
 二人とも放心したように、しばらく無言のまま肩で息をしていた。その間、俺たちはずっとつながったままだった。それでもさすがに今度は、俺のモノは先刻までの勢いを失っていた。
「……どうだった。初体験は?」
 俺に抱きついたまま、姉貴が聞く。
「お姉ちゃんとのセックス、気持ちよかった?」
「……うん。すっごい、よかった。もう最高。俺、三回も続けてこんなに出したのなんて初めてだよ」
「んふ……」
 姉貴は小さく笑うと、俺の首に腕を回した。そして、唇を重ねてくる。姉貴とのキスは二度目だけど、先刻はゆっくりと感触を確かめる余裕もなかった。
「姉貴は……その……どうだった? 俺として……」
 俺の声はちょっと自信なさげだった。俺にとっては初めての女性経験だから、気持ちよかったのは当然だ。だけど経験豊富な姉貴は、俺なんかじゃ物足りなかったかも。一応、感じていたとは思うんだけど。
「……すっごい、感じた。お姉ちゃん、自分がリードするえっちって向いてるみたい。それに慎くんのって、すごく立派だもん。自信持っていいよ」
 よかった。安心した。俺は姉貴の身体に回した腕に力を込めて、もう一度唇を重ねる。
 抱き合ったまま、そのまま何分間かじっとしていた。
 全身が、なんともいえない倦怠感に包まれている。だけど精神的にはすごく満たされているみたいで。
 一晩中、ずっとこうしていたいと思った。
 だけど……。
「……あ、慎くんってば、ばか」
 なんの前置きもなしにいきなり、姉貴が耳元でささやいた。
「は?」
 なんのことだろう。俺、何か失敗しただろうか。
 そりゃあ、一瞬先にイってしまったけど、姉貴もちゃんとイったみたいだったし。
「せっかくのチャンスに、あんた写真撮ってなかったっしょ!」
「あっ!」
 すっかり忘れてた。それどころじゃなかった。
 初体験で、あんなに気持ちよくて、写真のことなんて頭になかった。
 それでも、インターバルタイマーをセットしたカメラがあったことが唯一の救いだ。
「ああ、もう。せっかく、あんなに乱れたのに……」
「……ごめん」
「いいわ。まだ夜は長いんだし」
「え?」
「ちょっと休めば、まだまだできそうじゃない? 今度はちゃんと撮りなさいよ。ほら、こんなポーズなんてどう?」
 姉貴が俺の上から降りた。今まで入っていたものが、ヌルリと抜ける。
 ベッドの上に腰を下ろして、姉貴は両脚を開いた。
「ほら、ちゃんとカメラ持って」
 そう言って、指であそこをいっぱいに広げて見せた。
 真っ赤に充血した割れ目から、白い液体が溢れ出している。
「慎くんってば、お姉ちゃんの中にこんなにいっぱい出しちゃって」
 お尻の方へと垂れる精液を、指で拭ってペロペロと舐める。
 俺は慌ててカメラを拾い上げると、続けてシャッターを押した。
 拭っても拭っても、精液は奥の方から溢れ出してくる。
「お姉ちゃんのおまんこ、慎くんのザーメンでいっぱいだよ」
 人差し指と中指を中に入れて、掻き出してくる。精液がべっとりとまとわりついた指を、わざといやらしく、俺に見せつけるように舐めた。白く汚れた指の一本一本に、舌を絡ませる。
「ほぉら、もう元気になった」
 姉貴が嬉しそうに笑う。
 俺のモノは、もう固く反り返っていた。姉貴の挑発的な仕草は効果てきめんだ。
「はい、横になって。ちゃんとカメラは持ったままね」
 俺は素直にその言葉に従う。姉貴が俺の上にまたがった。
 ペニスを握って、今度はゆっくりと腰を下ろしていく。
 ずぶ、ずぶ……と、姉貴の中へと埋まってゆく。
「はあぁぁぁぁ…………入ってくるぅ……太いのが……奥まで……」
 俺はモータードライブを使って、一番奥に突き当たるまでの姉貴の表情の変化を、残らずフィルムに収めることに成功した。



エピローグ

 結局あの夜は、明け方まで寝かせてもらえなかった。
 数え切れないくらい、姉貴の中に出した。
 気持ちよくて気持ちよくて、何度でもできそうだった。なんだか、最後の一滴まで搾り取られたような気がする。
 あの一晩で、セックスの気持ちよさを全て教え込まれたみたいだ。
 フィルムは二十本以上使った。できあがった写真はこの前のなんか問題にならないくらいハードなもので、当然、儲けもそれだけ多かった。


 あれから一週間が過ぎた日のこと。
 俺がほくほく顔で札束を数えていると、どこからともなく姉貴が現れた。金の気配にはやたらと敏感なんだから。
「じゃ、約束通り七割ね」
 俺の手から、札束を奪おうとする。
「ちょっと待った! 今回は機材借りるのにも金がかかってるんだから、七割なんて暴利だよ!」
「なによ〜。恥ずかしい写真を撮らせてあげた上、あ〜んな気持ちイイことしてあげたんだから当然でしょ」
「なに言ってんだよ! 姉貴の方が楽しんでたじゃないか! 山分けだよ!」
「え〜! 今晩また気持ちイイことしてあげるから、ね?」
「とか言って、また自分が楽しむ気だろ!」
「慎くん、したくないの?」
「……っ、そりゃ……したいさ」
 一瞬返事に詰まったけれど、素直にうなずいた。
 あの夜、姉弟としての一線を越えてしまった俺たちだけど、この一週間、エッチなことは何もしていない。
 姉貴は何も言わないし、俺の方から誘うなんてできるはずがない。
 一度セックスしたからといって、これからもさせてもらえるなんて考えちゃいけない。姉貴は本当に気まぐれな奴なんだから。下手すると「エッチしよう」なんて言った瞬間に張り倒されるかもしれない。
 だけど、一度あの快感を知ってしまった以上、またしたいと思うのが当然のこと。一週間も経てば当然下半身が疼いてくる。
 だから正直なところ、姉貴の方から誘ってくれないかな〜、なんて淡い期待を抱いていたところだった。
「……でも、姉貴だってしたいんだろ?」
「……したい」
「じゃあ、山分けでいいじゃん」
「……六割五分」
 金を巡る攻防はその後もしばらく続いたけれど、結局最後は姉貴が折れて、なんとか五分五分にしてもらった。
 だけど交換条件として、今夜は姉貴を最低五回以上イカせなければならないことになった。姉貴をそれだけイカせるまでに、いったい俺は何回イってしまうのかと考えると気が遠くなる。
「姉貴なんか、自分の金を遣うことないだろ。服だって靴だって、彼氏とかパパとかに買ってもらえばいいじゃん。いるんだろ、どうせ」
「そりゃ、靴とか服とかバッグとかアクセサリとかはね」
「他に何があるんだよ」
「そうね……」
 唇に指を当てて考えていた姉貴が、いきなり抱きついてきた。
「バイクを買って、夏休みはあんたと一緒にツーリングなんて、どぉ?」
 背伸びをして俺の首に腕を回し、耳朶を噛むような体勢でささやいた。
「……え?」
 一瞬、俺の顔が緩んでしまったけれど、すぐに思い直した。
 姉貴のことだからきっと、二人でどこか人気のない処に行って、野外露出とかアオカンとかに挑戦しようとしてるんだ。
「……慎くんは、お姉ちゃんと一緒に出かけるのはイヤ?」
 俺は首を横に振った。
 姉貴と二人でツーリング。それも楽しいかもしれない。
 まあ、色々と苦労させられそうな気はするけれど。
 だけど、最近気付いたことがある。
 俺は、こんな姉貴に振り回されるのが決して嫌ではないんだ、って。
 だから、いつまで経っても姉貴には勝てないんだと思う。


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