いって、しまった。
もう、取り消せない。
「も、もちろん! 上村くんが、嫌じゃなければ……だけど」
私のお尻は、まだバージンだ。
だけど尻尾を挿れられるようになって以来、いずれはお尻も犯されてしまうのだろうと心の準備はしてきた。
その時は上村くんに〈奪われる〉のだと思っていたのに、まさか自分からいい出すことになるなんて。
実際のところ、お尻の初めてはラッキーと上村くんのどちらにあげるべきなのかの結論は出ていない。
だけど、ちょうどいい機会なのかもしれない。
最愛の〈彼氏〉であるラッキーに後ろの初めてをあげられないのは少し残念ではあるけれど、獣姦もアナルセックスも、普通のセックスよりは難易度の高い行為だし、そのふたつが重なったらうまくできるかどうかわからない。
そもそも、人間の男性器すら挿入されたことのない部位に、いきなりラッキーの瘤を受け入れるのは難しそうな気がする。
初めてラッキーとセックスした時、私は既にバージンではなかった。ならば、後ろもまずは人間同士で経験しておいた方がいいのかもしれない。
それに上村くんのことだって、好きなのは間違いない。
少なくとも、アナルセックス初体験の相手に選んでもいいかな、と思えるくらいには。
――そう。
アナル……セックス。
改めて言葉にすると、胸がどきどきしてくる。
これって、普通じゃない。
セックスの経験がある女子高生なんてさほど珍しくもないけれど、お尻も経験ずみとなると、その数は桁違いに減るはずだ。
普通じゃない――そう考えるとさらに鼓動が速くなる。
普通じゃない性行為にこそ興奮してしまう――それが、私。
普段が真面目な優等生で、そんな自分に少しコンプレックスを持っているから、どこかで羽目を外してみたくなる。
だから――
して、みたい。
アナルセックス、してみたい。
そう、想った。
普通のセックスができない今日こそ、いい機会だ。
そう考えて、思い切っていってみた。
上村くんはどう思っただろう。
あの上村くんが、女の子の方からアナルセックスを求められたところで、引くことなどないと思うのだけれど。
それでも微かな不安を感じながら、寝返りをうって恐る恐る上村くんを見あげた。
目に映ったのは、私を見おろす、どことなく楽しげな微笑みだった。
「本気でいってる?」
「……ん」
小さくうなずく。
「俺が初めてで、いいのか?」
「…………ん」
再度の確認に、私ももう一度うなずいた。
「いい……よ、……お、う、後ろのバージン……上村くんに、……あ、あげる」
「じゃ、いただきます」
予想した通り、上村くんは遠慮なんかしなかった。
私の脚をつかんで、開かせる。
「あ、ん……っ、んくぅ、ん」
お尻に挿入されていた、尻尾つきのアナルバイヴが、ゆっくりと引き抜かれていく。
その刺激だけでいきそうになって、背筋がぞくぞくした。
お尻への刺激って、やっぱり、これも気持ちいい。
今日はずっとアナルバイヴを挿れられたままだった。もう、お尻は充分にほぐされている。上村くんのペニスはバイヴよりもずっと大きいけれど、きっと、多分、なんとかなる。痛いことは痛いだろうけれど、少なくとも、いま膣に挿入されるよりはマシなはずだ。
上村くんは私の両脚を抱えて、間に身体を入れてくる。
まるで、普通のセックスをする時のような体勢。
「ひゃ……んっ、ぁんっ!」
あそこに擦りつけられる、固い弾力。
ぬるぬるとした感覚。
膣内への挿入と違って、割れ目を擦られるだけなら気持ちいい。
もう前戯なんて必要ないのに……と思ったけれど、お尻への挿入の前に、秘裂から溢れ出している蜜を、潤滑ローションの代わりに塗り広げているのだろう。
濡れた感触が、お尻の方まで滴り落ちていく。
「……挿れるぞ」
両脚を持ち上げられて、お尻を少し浮かせるような体勢にさせられる。
「ん……んくっ、……ぁっ!」
割れ目を擦っていた固い感触が、お尻へと移動する。
お尻の穴に、押しつけられる。
じわじわと、その圧力が増してくる。
「お……お尻、って……う、後ろ向きで、するんじゃないの?」
「バックからってのが多いけどな。この体勢なら前からでもできるぞ。この方が、ロストバージンの瞬間の梨花の顔がよく見られるからな」
そういわれて、私の顔は一瞬で真っ赤に染まる。
初めての、お尻への挿入。
その瞬間の顔を、まじまじと見られてしまうなんて。
その恥ずかしさたるや、言葉でいい表せるレベルではない。
だからこそ、この体勢でしようとしているのだろう。上村くんはSだから。
ただでさえ恥ずかしい、お尻の初体験。
その恥ずかしい格好を、顔を、見られながらの挿入。
恥ずかしくて恥ずかしくて、だからこそ感じてしまう。
Mな私にとって、恥ずかしさと気持ちよさはイコールなのだ。
お尻に押しつけられる圧迫感が増していく。
お尻の穴が、拡げられていく。
痛い。
アナルバイヴを挿れられる時の感覚とは、まるで違う。
上村くんのペニスは、けっこう……いや、かなり大きいと思う。長さも、太さも、日本人男性の平均サイズを大きく上回っているはずだ。
それが、私の中に入ってこようとしている。
お尻の、中に。
肛門括約筋を力ずくで押し拡げて、直腸の中へと侵入してくる。
信じられないくらいに大きな異物の感覚。
痛い。
痛い。
はっきりいって、すごく痛い。
とはいっても、いま膣に挿入されるような、傷の痛みではない。
初体験の時を想い出すような、無理やり拡げられる痛み。
その痛みはどこか甘い。
「あ……ぁ……、はぁ……ぁんっ! んくぅ……ぅ、ぁ、ぅんっ!」
ずぶ……ずぶ……と、ゆっくり、だけど着実に、私の中に埋まっていく大きな男性器。
膣と違って行き止まりがないから、「まだ入ってくるの?」と思うくらいどんどん奥まで入ってくる。
「んんっ、……ぅ……ぅあぁぁぁっっ!!」
最後は、根元までの残り数センチを、一気に突き挿れられた。
反射的に悲鳴が上がる。
全身が痙攣する。
なのに膣は、エッチな蜜を溢れさせせている。
「どんな感じだ? 完全に根元まで入ったぞ」
「は……ぁ……すご……い」
苦しいというか、熱いというか、うまくいい表せない不思議な感覚。
お尻の中に、上村くんが在る。
お尻の穴は、本当にいっぱいいっぱいに拡げられている。
上村くんのもので身体の中をいっぱいにされているという感覚は、普通のセックスよりもさらに強かった。
だから、いかにも『犯されている』という感じがする。
ラッキーたちの瘤に次ぐ、きつい挿入だった。
その痛みで、本当にお尻でセックスをしているのだと実感する。
まだ高校生なのに、お尻でのセックスを経験してしまった。
お尻のバージンを、上村くんにあげてしまった。
どうしてだろう。そのことをとても嬉しく感じるのは。
やっぱり〈初めて〉を好きな人にあげることは、女の子ならではの悦びなのだろう。
「痛いか?」
「……すこし」
だけど、痛いだけじゃない。
「気持ちいいか?」
「…………うン……すごく」
根元まで突き挿れられると、身体の中が上村くんで満たされているように感じる。
そして、ゆっくりと引き抜かれている時の感覚がたまらない。挿れられる時は前の方が気持ちいいけれど、引き抜かれる時はお尻の方が気持ちいいかもしれない。
「その様子だと、もっと激しくしてもいいな」
「ん……イイ、よ?」
うなずいてそう応える時、自分で思っていた以上に甘えた声になっていた。
「……わ、私のお尻が壊れるくらい、激しく、して?」
私、もうダメかもしれない。
心底、激しくされることを望んでいる。前よりもきついお尻のセックスで、めちゃめちゃに犯されたいと願っている。
アナルセックスというアブノーマルな体験に、いつも以上に私のマゾな部分が露わになっていた。もう抑えられない。
「あ……あぁっ! あぁぁんっ! あぁぁぁ――っっ!!」
上村くんが、激しく動きはじめる。
普段のセックスと変わらず、お腹を突き破られるような勢いだ。
ひと突きごとに悲鳴があがる。
普段よりも苦しげなその悲鳴は、だけどやっぱりどこか甘かった。
気持ち、いい。
私、感じてる。
本気で感じてる。
あそこがびしょびしょに濡れているのがわかる。湧き出した秘蜜はお尻の方まで滴り落ちて潤滑液となり、さらに気持ちよくなってしまう。
もう、今にも達してしまいそう。
犯されているのは性器ではなくてお尻なのに。
初めてのお尻なのに。
痛いくらいに拡げられて、激しく突かれているのに。
私は、本気で感じていた。
口から発せられるのは、正確には悲鳴ではなく、悲鳴のように激しい喘ぎ声。
とめどもなく涙が溢れる。
なのに、口元には締まりのない笑みが浮かんでいる。
こんな感覚、初めてだ。
初めてといえば、上村くんとこんな風にセックスするのも初めてだった。
まず、自分の部屋でするのが初めて。
そもそも、上村くんを自室に招いたのが初めてなのだ。
服を着たまま上村くんとセックスするのも初めて。
服は着たままだけれど、下着は着けていなくて、なのに耳と首輪はつけたままというマニアックな格好も初めて。普段は、耳と首輪を着けられたらまず裸になっていた。
そして……
上村くんの姿を正面に見ながら犯されるのも初めてだった。
私は牝犬で、ペットだから、いつもは四つん這いで後ろから犯されていた。
なのに今は、自分のベッドに仰向けにされて、目の前に上村くんの姿がある。
久しぶりの、人間っぽいセックス。
「かみ……むら……くぅんっ」
怒濤のように押し寄せてくる快楽に翻弄されながら、わずかに残った力を振り絞って両腕を持ちあげた。
「だい……てっ、ぎゅって……して」
縋るようにいいながら、自分から上村くんの身体に腕を回す。
上村くんの上体が覆いかぶさってきて、身体が重なる。
私よりずっと太い腕が身体に回されて、苦しいくらいに抱きしめられる。
だけど下半身は激しい往復運動を続けている。
唇が重ねられる。
私は無我夢中で舌を絡めて上村くんの唾液を貪り、自分の唾液を上村くんの口中に流し込む。
変なの。
いや、むしろ普通なんだけれど、私にとっては変。
まるで、普通に人間の恋人同士のセックスみたい。
そういえば、上村くんとちゃんとキスするのも初めてではないだろうか。犬がじゃれるように口を舐めたことは何度もあるのだけれど。
本当に、変な話。
これまで、さんざん牝犬として犯されてきたのに、初めてのアナルセックスが、上村くんと初めての人間っぽいセックスだなんて。
なのに、いつもと変わらずちゃんと感じてるなんて。
もう、わけがわからない。
わかっているのは、上村くんとのセックスは、お尻であってもものすごく気持ちがいいということ。
そして、私は彼のことが大好きだということ。
だから……
「あぁぁっ! あぁぁ――っっ!! だっだめぇっ! いくっ! いクぅっ!! いィィィ――っっ!! あぁぁぁぁ――――――っっっ!!」
直腸の中に噴き出してくる熱い奔流を感じた時、私は初めてのアナルセックスで絶頂に達してしまった。
ふたり同時にいってしまった後も、私たちはつながったままで抱き合っていた。
全身で感じる上村くんの体温が心地よい。
からかうような笑みを浮かべた上村くんの顔が至近距離にある。
「梨花は本当にエロいな。アナル初体験なのにこんなに感じて、本気でイクんだから」
「う……わ、私は別にエロくないもん! か、上村くんが上手すぎるだけだもん!」
上村くんとのセックスは本当に気持ちがいい。
私もけっこう感じやすい体質なのかもしれないけれど、それ以上に、やっぱり上村くんがテクニシャンなんだと思う。
「梨花がド変態なだけだろ。学校では真面目なふりして、実は獣姦やアナルセックスで感じまくるエロ娘だもんな」
サドな上村くん。今日は妙に意地悪なことをいう。もしかして言葉責めだろうか。そう思うとなんだか胸がどきどきしてしまう。
「し、仕方ないじゃない! だってキモチいいんだもん! 感じちゃうんだもん! か、上村くんだって、こんな、変態でエロい、エッチ大好きな女の子が好きな変態のくせに!」
「いや、そんなことはないぞ?」
「……え?」
予想外の返事に、一瞬、言葉を失った。
私がどんなにエッチでも、上村くんは受け入れてくれると信じていたのだけれど、実はお淑やかで清楚な女の子がタイプだったのだろうか。
だとしたら、私みたいな女の子は好きじゃない?
それは、少し……ううん、すごく、哀しい。
私が表情を曇らせると、上村くんの顔には意地の悪い笑みが浮かんだ。
「俺は、もっともっと変態でエロい女の子の方が好きだな」
「……え?」
「だから、梨花のこと、もっともっと調教してやるよ」
「――っ!?」
上村くんは身体を起こすと、私の脚をつかんで身体の向きを変えさせた。
まだつながったままのお尻が強引に捻られて、私は短い悲鳴をあげた。
ベッドの上で俯せにされる。
「後ろも、もっともっと開発しないとな」
「ひゃんっ! んゃんっ!! ふぁぁぁぁっ!」
背後から、上村くんの大きな身体が覆いかぶさってくる。
胸を鷲づかみにされて、下半身がぐいぐいと押しつけられる。
「あぁっ! ゃんっ! そんな、いきなり……っ! 痛ぁ……ァ……あぁぁっっ!!」
背後から押し潰されるような体勢で、お尻が深々と貫かれる。やっぱり、向かい合った体勢よりも挿入は深い。
今日はもうくたくたなはずなのに、そしてあんなに激しくいったばかりなのに、私の身体はすぐに反応する。
本当に、いやらしい身体。犯されれば犯されるほど、よりいっそう感度が増していくみたい。
「お尻、気持ちいいか?」
体重を乗せて下半身を打ちつけながら、訊いてくる。
「……イ……っ、イぃっ! イィのぉっ!」
私はシーツを握りしめ、頭をガクガクと前後させる。
「お……っ、お尻キモチいいっ! イイのっ!! も、もっと、もっと犯してっ! おしり……っ、お尻犯してぇぇ――っ!!」
いやらしい言葉が止まらない。理性のたがは完全に外れてしまっていた。
上村くんの動きに合わせて、お尻を振る。
「わっ、私っ! すごくいやらしい娘なのっ! 初めてのお尻でいっちゃうヘンタイなのっ! お尻が気持ちよくて仕方がないのっ! だっ、だからっ! もっと! もっとぉっ! もっとぉ――っ!! もっとお尻犯してぇ――――っっ!!」
自らいやらしい言葉を連呼することで一気に昂ってしまい、あっという間に達してしまった。
ああ、もう。
本当に、私ってばどんどん変態になっていくみたい。
だけど……
それもいいかな、って想ってしまう。
上村くんが、いやらしい女の子が好きだっていうのなら、それもいいかなって。
ラッキーだって、エッチな女の子は嫌いじゃないはず。そもそも、相当にアブノーマルな女の子じゃなければ、ラッキーとセックスしようなんて思いもしない。
だから――
私はもっといやらしい女の子になってもいいのかな――っていうか。
もっと、もっと、上村くんに〈調教〉されたいな、って。
それが、今の素直な気持ちだった。
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