あとがき


 まだ終わってないから、「なかがき」とでも言うべきでしょうかね?
 とゆ〜わけで『金色の瞳・前編』です。
 『銀砂の戦姫』のあとがきで予告したとおり、前後編になってしまいました。読者の方々が驚いているか、怒っているか、ちょっと気になるところですが…。
 理由は二つあります。
 ひとつは、一回にまとめると過去最長の『ファ・ラーナの聖墓』以上の長さになりそうだったこと。そうなるとさすがにPCで読むのは辛いかな、と。
 そしてもうひとつ。そもそも私が連載ではなく一話丸ごとの書き下ろしにこだわるのは、私の作品はその方が面白いからです。
 あまり時間をかけず、最初から終わりまで一気に読むのがお奨めの読み方。
 しかし今回に限り、ここで切った方が面白いだろう、と。いちばん続きが気になる箇所ですから。
「なんでこんなところで終わるんだ〜!」とやきもきしながら後編をお待ちください(笑)。
 後編の公開がいつになるか…それは、皆さんの声援にかかっています(と、読者に感想メールを強要する私)。

 まだ途中なので、内容に関する詳しい解説は後編のあとがきに譲りますが…作者として気になるのは、三〜四章に対する読者の反応ですね。
 ついに、こうなっちゃいました。エイシス×奈子な展開は、主として女性読者には人気あるのですが、百合ネタ好きの男性読者には許せないかもしれませんね〜。
 ちょっと面白いのは、同じ百合好きでも女性の場合、エイシスファンは多いしエイシス×奈子も認めてる人が多いこと。
 男性読者の場合、エイシス個人のファンはいても、カップリングとなると奈子×由維、奈子×ファージが圧倒的な支持を受けます。エイシスやハルティについては「余計なやつ」とか「邪魔だ」とか…もう散々な言われよう(笑)。
「由維という本命がいるのに、どうして他の相手とこ〜ゆ〜ことするのか」とお怒りの方もいるかもしれませんが、奈子ってのはそ〜ゆ〜性格なんです。
 惚れっぽくて、その場の雰囲気に流されやすくて、しかもセックスをあまり特別なことと考えてないフシがある。この辺の性格は、知り合いのある女の子に影響受けてます。別に、奈子のモデルってわけではないですが。
 実は『銀砂の戦姫』ではハルティとも一線を越える構想もあったのですが、六話でハルティ、七話でエイシスとなると、さすがにちょっと…ね。
 今後の展開の都合上エイシスは外せなかったので、ハルティ様にはガマンしてもらいました(笑)。

 奈子×由維は健在ですけど、今回はキスシーンすらなしです。しばらくは健全路線で行こうかと思いまして。
 女の子同士の場合、ただ身を寄せ合ったり、手をつないだりしてるだけの方が好きなんですよ、私。そんなわけで、一章の港のシーンが今回いちばんのお気に入りです。
 ちなみに、あのシーンの舞台は架空の街ですが、オホーツク海沿岸に実在するいくつかの街をモデルにしています。八月の気温や海の状態に関する描写はほぼ事実で、港のシーンは主に北見枝幸がモデルです。
 そして作中に出てくる「ほたてチップ」も実在するお菓子です。ちょっと名前を変えてますが、正しくは「ホタテチップス」だったかな。たしか紋別のお菓子だったと思ったけど、JR札幌駅でも入手可能です(一九九九年五月現在)。味は…お菓子というよりおつまみですね。


 それにしても…今回はファージがメインの話のはずなのに、彼女の出番が少ないですね〜。
 まともに出てきたのは、序章と二章だけ。これじゃまるでエイシスが主役みたい。
 後編のファージの出番も、ほとんどが生前の話。いいんでしょうかね、こんなことで。
 …というところで、最後に次回予告をしておきましょう。
 次回はもちろん『金色の瞳・後編』…と言いたいところですが、その前にインタルードが一話入る予定。
 ただし、いつものインタルードとは違い、奈子がこんなコトやってる間の、由維と亜依のお話です。「由維×亜依のお話」ではないのでお間違いなく(笑)。このエピソードは、もしかしたら後編の中に組み込まれるかもしれませんが。
 そして問題の後編は…早くて七月、遅くて八月下旬〜九月上旬でしょうか。
 今度はちゃんと完結します。間違っても『中編』なんかにはならない…といいな(笑)。
 では、待ちきれない方のために後編の下書きをちょっとだけ紹介しましょう。(完成した作品とは異なる場合があります)

【六章『復讐の序曲』より】
 奈子は立ち上がると、エイシスの前へとやってきた。
「あんたが…」
 口を開くと同時に、いきなり飛びかかる。
 バランスを崩して倒れたエイシスの上に馬乗りになると、思い切り顔を殴りつけた。
「お前のせいだっ! お前が…お前が余計なことを言ったから!」
 エイシスの手から、短剣を奪い取って振り上げた。
「殺してやるっ!」
 短剣は、エイシスの左肩に深々と突き刺さった。
 小さくうめき声を上げたエイシスは、短剣を握った奈子の手首をつかむ。
「殺してやる…殺してやる…! お前を殺して、アタシも死ぬ…」

【七章『金色の瞳』より】
「レイシャの血を引いているわけでもない、どこの馬の骨とも知れない小娘が竜騎士になろうだなんて、片腹痛いんだよ」
 エイシードの口元に、歪んだ笑みが浮かんでいた。それで、すべてを悟った。
「そう…いうこと…」
 エイシードが剣を引き抜くと、ファーリッジの胸から血が飛び散る。
 立会人のひとりが、血相変えて立ち上がるのが見えた。他の者は…笑みすら浮かべている。
(そういうことか…)
「ふ…ふふ…ふ…」
 無意識のうちに、唇から小さく笑いがもれた。エイシードの顔を見上げる。
 はしばみの瞳の奥が、金色の光を放っていた。

【八章『仇敵』より】
「墓守について、私が知っていることはこれだけです」
 その話を、奈子は青ざめた表情で聞いていた。
 もう、食事どころではなかった。ふたりは席を立って居間に移動した。
「少し違う話をしましょうか」
 ずいぶんと暗くなってきていた。男は居間の明かりを灯す。
「あなたのことです」
「アタシ?」
「ナコ、あなたはいったい何者ですか」
 ストレートに訊いてきた。

【九章『黄昏の堕天使』より】
 思わず、笑いがこぼれた。クレインが怪訝そうな表情を見せる。
「ふ…ふふ…」
 突然、思い出してしまった。思い出したら、笑いが止まらなくなった。
「ふふ…は…ははは…」
 可笑しくて、可笑しくて、涙も出てきた。
 どことなく、常軌を逸した笑いだった。
「はは…一年前にも、似たようなことがあった。アタシ、言ったんだ。エイクサムに」
 奈子は涙を手で拭った。
「この世界がどうなろうが、知ったこっちゃない、ってね」
 きっぱりと、そう言い切った。
「何万人死のうが、アタシには関係ない。よその世界のことなんか、どうでもいいんだ。ただ、ファージは、アタシの友達だった」



 己の手で親友の命を絶った奈子の運命は?
 そして、ファージに隠された秘密とは?
 光の王国7『金色の瞳・後編』鋭意執筆中!
 お楽しみに。

一九九九年六月  北原樹恒
kitsune@mb.infoweb.ne.jp
創作館ふれ・ちせ
http://plaza4.mbn.or.jp/~kamuychep/chiron/


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