プロローグ


 その来客は、ドアを開けて入ってきたわけではなかった。
 もちろん窓から侵入したとか、天井や床に穴を開けたとか、壁を壊したとかいうわけでもない。
 だからこそ、この人材派遣会社・株式会社MPSの若き営業部長、知内祐人(二十八歳、独身)は溜息をついた。
 彼のオフィスには、忽然と姿を現した三人の若い娘が立っている。
「……今日は、いったいどういったご用件ですか、陛下?」
 また、厄介ごとに巻き込まれるのか――そう思いながらも、知内は条件反射で営業スマイルを浮かべる。その笑顔はやっぱり少し引きつっていたが、幸いなことに、今回の彼の出番はこれだけだった。



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