「や……あぁん」
彩樹の下で、一人の少女が身体を捩らせていた。
鼻にかかった甘ったるい声。
小柄で華奢で、見た目は限りなくロリータ風味なのに、どことなく艶っぽいオーラを漂わせている。それはこの少女の、外見からは想像できない豊富な性経験によるものだろうか。
西野歩美。
つい先日、彩樹の愛人リストに加わったばかりのこの少女が、今いちばんのお気に入りだった。家も比較的近所だから、しょっちゅう呼びつけている。
彩樹にとって、歩美が見せる怯えた小動物のような仕草はたまらないものがある。彩樹の嗜虐的趣味を刺激してやまない。
それでいて、異世界で奴隷として暮らした半年間ですっかり開発された身体は、素晴らしい感度で彩樹の愛撫のひとつひとつに反応する。
「彩樹先輩……せんぱぁい……」
今も、泣きそうな表情でぎゅっとしがみついて、熱い吐息を漏らしている。本当に可愛い反応だ。乱暴な愛撫を続けながら、彩樹は背筋がぞくぞくするのを感じていた。
歩美の切ない泣き声に、これ以上はないというほどの興奮を覚える。
もっと苛めたい。
もっと泣かせたい。
彩樹の歪んだ愛情が、そんな衝動を呼び起こす。本能の命ずるままに、彩樹は用意しておいたロープで、歩美の手足をベッドに縛りつけていった。
「や……っ、いやぁっ!」
抵抗が激しくなる。涙を溢れさせながら、必死に彩樹の手から逃れようとする。
歩美は本気で怯えていた。その理由はわかっている。こうして身体の自由を奪われての性交は、奴隷としてさんざん主人に凌辱された、闘奴時代の忌まわしい記憶を呼び起こすのだ。
それがわかっていながら、彩樹は歩美を縛って犯すのが好きだった。根っからのサドである。ベッドの上で女の子を泣かせることに、至上の悦びを感じるのだ。
「やぁっ、ヤダっ! 彩樹先輩!」
泣き叫ぶ歩美の口を、強引にキスで塞ぐ。閉じることを禁じられた脚の間を、乱暴に手でまさぐる。長い指を、歩美の中にもぐり込ませる。
「やぁぁっ! いやぁ――っ!」
止めどなく涙を溢れさせながら、それでも歩美は快楽の谷間へと堕ちていった。
「ふえぇぇ……ひどいですぅ……」
一時間ほど執拗に攻めたてた後で、縛っていたロープをほどいてやる。放心したようにぐったりとしていた歩美は、自由になるとまたぐすぐすと泣き出した。
「ヤダって言ったのにぃ……」
「オレのこと、嫌いになったか?」
「そんなこと、あるわけないじゃないですかぁ」
なんだかんだいっても、歩美はこれでちゃんと感じているのだ。マゾの素質は十分にある。
もっともこれは歩美に限ったことではない。彩樹の餌食になった女性のほとんどが「虐められる悦び」に目覚めてしまう。普段は対等に振る舞う早苗ですら、ベッドの中では彩樹のおもちゃだ。
「あたしが、彩樹先輩のこと嫌いになるはずないじゃないですか。でも……」
「でも?」
「やられたらやり返しちゃいまーす!」
いきなり、歩美が抱きついてきた。
彩樹の胸に唇を押しつけ、手を下半身へと滑らせる。指先が、彩樹の女の子の部分に触れた。
歩美が一瞬、驚いたような表情を見せる。
「彩樹先輩……すごく、濡れてる」
「誰かさんが可愛い声で悶えるからな。すっげー興奮した」
「もぉ……」
赤面した顔を見られたくないかのように、歩美は彩樹の胸に顔を押しつけて強く吸った。
指が、ためらいがちに中に入ってくる。
「ん……、ふっ……ぅんっ!」
歩美の体格に比例した華奢な細い指だけれど、彩樹の身体は敏感に反応した。身体の奥から、熱いものが溢れ出してくる。
彩樹の反応に気をよくしたのか、指の動きが少しずつ大胆になってくる。
「先輩、気持ちイイ?」
「……ああ。上手いぞ、歩美」
彩樹は歩美の頭を撫でてやった。数え切れないほどの女性経験を持つ彩樹にとっても、歩美の愛撫はなかなかのものだった。ふたつも年下で、純情そうな顔をしているのに、それに似つかわしくないほどのテクニシャンだ。向こうで仕込まれた技術なのか、それとも持って生まれた才能なのか。
「そう……そこ。あぁ……もっと……強く」
彩樹は荒い息をしながら、指の動きに合わせて自分も動いて、貪欲に快楽を貪っていた。胎内のいちばん深い部分で、二本の指が独立した意志を持つ生き物のように、器用に蠢いている。
「彩樹先輩の感じてるところって、すごく……綺麗」
どこかうっとりした表情で、歩美が彩樹の顔を覗き込んでいる。彩樹は小さく苦笑した。
「……じゃあ……もっと感じさせてくれよ」
「はい」
歩美はまた、彩樹の胸に唇を押しつけた。そのまま彩樹の肌に舌を這わせながら、下へと移動していく。ほとんど無毛の恥丘を越え、熱く濡れそぼった秘所へと辿り着く。
指でその部分を開いて、いちばん敏感な突起を舌先で刺激する。彩樹の身体が小刻みに痙攣した。
「彩樹先輩のここって、可愛いですよね。赤ちゃんみたい」
そんなことを言いながら、舌先をこちょこちょと震わせる。彩樹の口から嗚咽が漏れる。
確かに、彩樹の身体はひどく未成熟な部分がある。身長こそ百七十センチを越えて、女子としてはかなり高いが、十七歳の女の子らしい丸みに欠け、胸や性器などは小学生くらいにしか見えない。彩樹の精神と肉体の間には、奇妙なギャップが存在していた。
「ン……ふ……」
彩樹の股間に顔をうずめた歩美は、苦しそうに鼻で呼吸をしながら口での愛撫を続けていた。決して長くはない舌を必死に伸ばして、中へ挿入した指とリズムを合わせて動かしている。
その顔を、彩樹の脚が無意識のうちにぎゅっと挟み込む。手を伸ばして、歩美の髪を乱暴に掴む。
「……あっ……あぁっ! ……イイ、……い、イイッ!」
歩美の愛撫は的確で、彩樹はもう達してしまいそうだった。
それでも、まだ我慢する。堪えることのできる限界まで。
簡単に終わってしまってはもったいない。破裂するぎりぎりまで身体の中に快感を詰め込んで、その後で達するエクスタシーこそが至上の悦びなのだ。
「あっ……く……ぅぅ……」
もう少し。もう少し。
血が滲むほどに唇を噛みしめて、津波のように襲ってくる快感に耐えて、いよいよ絶頂を迎えようとしたその瞬間。
「彩樹さん! 姫様がすぐに来てくださいって……」
最後の一歩、いや半歩のところで、甲高い声に邪魔をされた。
「……あ」
「あの……えと…………、お取り込み中……でした?」
彩樹の部屋の中に突然現れた二人の少女が、そこで繰り広げられている光景に気づいて、滝のような冷や汗を流していた。
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