初めて入る由起の私室は、思っていたよりも普通だった。
 真面目で地味な学校での雰囲気同様に飾りっ気のない部屋とか、あるいは逆にもっと極端な少女趣味で飾り立てられた部屋とかを想像していたのだけれど、杏の部屋と大差ない、ごく普通の女子高生の部屋だ。強いていえば、杏の部屋よりはきれいに片付いている、という程度の違いしかない。
 もちろん、これからすることを考えるとじっくりと室内を観察するような精神的余裕はなかったわけだけれど、ぱっと見の第一印象としてはそんな感じだ。
 二人は寄り添って、バスルームからここまで一枚のバスタオルで身体を包んで来た。
 そのまま抱き合うような体勢でベッドに倒れ込む。
 杏が上になって身体を重ねる。
 間近から、由起の顔を覗き込む。
 潤んで輝いている瞳。
 どことなく不安げな、しかしこれから起こることを期待しているようでもある表情。
 すごく、可愛い。
 今すぐ、いろいろなことをしたい。感じさせたい。可愛らしい喘ぎ声を上げさせたい。
 だけどなかなか思うように身体が動かない。
「うーん……あらたまってベッドの上で、っていうのも緊張する」
 腕の筋肉が強張っているように感じる。由起が小さく微笑む。
「……そうは見えないかもしれないけれど、私もよ」
「そぉ? どれ」
 意を決して、手を由起の左胸に当てた。
 鼓動の速さを確かめる――というのは口実で、手は実際には心臓の上ではなく、大きな乳房に当てられている。
 相変わらず、手にあまるほどの大きさだ。
 手のひらに感じるなめらかな曲線。均整のとれた美しい膨らみ。
 手に吸いつくようなきめの細かい白い肌。
 まったく、理想的な胸の見本のようだ。神の造形といっても過言ではないような美しいバスト。胸のサイズに少々コンプレックスを抱いている杏には羨ましい限りで、憧れてしまう。
 触れている手に少しだけ力を込める。指先がめり込んでいく。
 柔らかい。しかしただ柔らかいだけではなく、ゴムボールのような心地よい弾力がある。
 指に伝わってくる感覚が楽しくて気持ちよくて、病みつきになってしまいそうだ。
 膨らみは大きいのに、先端の突起はむしろ控えめな大きさで、淡いピンク色をしている。指でつまんでみると、固くなってつんと突き出している。
 感じているのだろうか。
 ちらりと、由起の表情を窺う。
 口を小さく開いて、やや荒い呼吸をしている。
 手で触れていない方の胸に顔を寄せ、膨らみの中ほどに唇を押しつける。柔らかな、滑らかな感触が伝わってくる。
 そこから唇を滑らせて、小さな乳首を口に含んだ。
 軽く、吸う。
 びくっ、と身体を震わせる由起。
「ぁっ……ぁんっ!」
 微かに、切なげな声が漏れる。
 もう少し強く吸ってみる。
 声が少し大きくなる。唇に当たる突起が少し大きくなって、固さを増す。
 歯を立てずに唇で噛む。そのまま軽く引っ張り、舌先でつつく。
 手の方も、指でつまんだり、つついたり、軽く引っ張ってみたりと愛撫を繰り返す。
「はぁっ……あっ、あぁっ……ぁんっ、あんっ!」
 だんだん、由起の声が大きくなってくる。ボリュームが上がるほどに声が甘ったるくなってくる。
 そんな反応が楽しくて、している杏も昂奮して、胸への愛撫に夢中になってしまう。
 ずっとこうしていたい、と思う。
 しかし、それでは納得しない女の子がひとり。
「……三郷さぁん……もっと……下も…………」
 甘い、甘ぁい、おねだりの声。今この一瞬、世界でいちばん可愛い女の子。
 由起はかなり感じやすい体質だ。胸への愛撫だけでも、その反応は杏の比ではない。
 そのため、すぐに胸だけでは満足できなくなってしまうのだ。
 また前回と同じ失敗をしてしまった……と反省しつつも、由起の反応があまりにも可愛くて、もっと見ていたい、もっとこの声を聞きたい、と思ってしまう。
 だから、片手を下半身へ移動させつつも、彼女が求めているものをすぐには与えない。
 下腹部に微かに触れるように爪先を滑らせる。その先の茂みを指でかき分ける。杏よりもやや濃い茂みの、長めの毛に指を絡めてくすぐるように動かす。
 だけど、その先にある快楽の核心には触れない。
 執拗に、ぎりぎりの境界線上に指を滑らせる。
「……み、三郷さんのいじわるぅ」
 泣きそうな表情。だけどどこか甘えた声。
 本当に可愛らしい。
 学校ではむしろ地味な存在で喜怒哀楽もあまり表に出さないように見える由起に、こんな声が出せるなんて。
「どうしたの? なにが意地悪なの?」
 しらじらしくとぼけて、その間も指は止めない。
「焦らさないで……我慢できなくなっちゃう」
「なにが我慢できないの? どうして欲しいの?」
「……う……いじわるぅ……」
「ちゃんと言ってくれないとわかんないなー」
 からかうように言い、さらに際どい部分をくすぐる。
「…………バカッ!」
 もう堪らないといった風に、由起はいきなり杏の手を掴んだ。そのまま、自分の陰部に押しつけるように導く。
 そこは驚くほどに濡れていて、杏の手には「ぬるり」どころか「びちゃっ」といった感触が伝わってきた。
「すっごい……びちゃびちゃに濡れてるよ?」
「……ばか」
「焦らしすぎた?」
「…………」
 恥ずかしいのを隠すように、きゅっと唇を噛んで、視線を逸らしている。
 それでも手は掴んだままで、擦りつけるように腰を前後させている。
「…………気持ちよすぎて、もう我慢できないの。こんなにした責任とって」
 切羽詰まった声。
 言いながら、杏の指を自分の中に導き挿れ、中をかき混ぜるように動かす。それに合わせて腰も動いている。
 意図的にやっているというよりも、我慢できなくて、快楽を貪ろうとする無意識の行動に思えた。
「は……んっ……んんっ! く、ぅぅん……」
 脚を閉じて杏の手を挟み、小刻みに震えて、目を潤ませている。
 由起の中はすごく熱かった。ぐっしょりと濡れてとろけるように、柔らかな粘膜が絡みついてくる。
「すっごぉい……中、熱っつい」
 中で指を曲げてこちょこちょと動かし、膣壁を刺激する。
 ぶるぶるっと痙攣するように震える由起。
「ぅんん……っ、ん、はぁっ! あぁ…………」
 杏の指にスイッチを入れられてしまったかのように、反応が一段と激しくなる。
 手を挟む脚にさらに力が込められる。
 下半身が痙攣するように震えている。
「あぁぁっ! あぁっ! そ……こ……っ、イっ……ィィっ!」
「ん……ここ? こうするとイイ?」
 指を曲げて、膣の中ほどをぐりぐりと刺激する。
「イィっ……そこっ、イィっ、イイぃっ!」
 由起の身体が仰け反る。
 腰が弾む。
 膣が収縮を繰り返す。
 中の温度がさらに上がったように感じる。人間の体温とは思えない。まるでお風呂のお湯に指を入れているような感覚だ。
「こう……? こんな感じでイイ? 感じてる?」
 指の腹を膣壁に押しつけて、小刻みに震わせる。由起の反応を見ながら、だんだん振幅を大きくしていく。
 甲高い嬌声に混じって、くちゅくちゅ、ぬちゃぬちゃと湿った音が聞こえてくる。
「はぁっ……あぁぁんっ、あんっ! あっ……い……ィ!」
 由起がぎゅっとしがみついてくる。肩のあたりに軽く爪を立てられる。
「ゆ……び…………二本、挿れて……」
「う、うん……」
 経験が少ない杏にとっては指一本の挿入でも怖々で、二本などという発想はなかったが、求められるまま、中指に薬指を添えて膣内に滑り込ませる。
 少し、きつい。挿入時の抵抗感は一本の比ではなく、狭い膣口を強引に拡げている感があった。
「ひ……ぃ……ィっ! あぁぁっ……っ! あぁぁんっ!」
 切なげな、そして感極まったような声。腰が艶めかしくくねって、指をさらに奥へと導き入れようとする。
「や、ダ……ぁっ、三郷さんの……指……、良すぎ……。どうして……」
 真っ赤に火照った頬。
 熱にうなされているようなつぶやき。
 焦点の合わない潤んだ瞳。涙がこぼれている。
 痛いのではないか、と心配してやや遠慮していたのだが、由起はより深く迎え入れるために自ら腰を突き上げている。
 たぶん、初めてではあるまい。自慰の時にも指を挿れることが多かったのではないだろうか。
 だから、より強い刺激を望んでいる。
 そう判断して、杏は指を奥まで突き入れた。
 二本の指が根元まで由起の中に埋まる。さらに深く貫こうとするように、ぐいぐいと手を押しつける。
「あぁぁぁ――っ! あぁっ! あぁ――っっ!」
 悲鳴を上げる由起。
 しかしそれは痛みに耐えかねての悲鳴ではなく、快楽の刺激がもたらす甘い悲鳴だった。
 いちばん深い部分で、指をバタ足のように交互に動かす。絡みついてくる濡れた粘膜をめちゃめちゃにかき混ぜる。
「やあぁっ! あっはぁぁんっ! んんっ、あぅっあぁぁっ! あぁぁ――っ!」
 反応が激しさを増す。
 腰が弾み、ベッドのスプリングが軋む。
 由起の反応に促されるように、さらに指の動きを激しくする。
 さらに激しく反応する。
 悦んでいる。感じている。これ以上はないくらいに感じて、悶えている。
 これなら、もっともっと激しくしても大丈夫かも。
 むしろ、その方が悦ぶかも。
 頭の片隅で、そんなことを考える。
 杏も、アダルトビデオさながらの由起の反応に昂奮して、あまり冷静な思考はできなくなっていた。
 深く考えもせず、さらにもう一本、人差し指も添えて三本の指を押し込んだ。
 さすがにきつい。本当にいっぱいいっぱいまで無理やり拡げているという気がする。
「やっ……ダメっ……、き……つぅ……痛……あぁぁっ! だめぇぇっ! んくあぁぁっっ!」
 由起の表情が歪む。
 でも、大丈夫。
 さすがに痛いのかも知れないけれど、それ以上に感じている。同じ女の子同士、反応を見れば本気で痛がっているのか気持ちいいのかはわかる。
 束ねた三本の指を夢中で抜き差しする。
 ぐちゅぐちゅと白く泡立つ愛液が手を濡らす。
 あふれ出して、シーツに染みを作る。
 飛沫が飛び散る。
「いやぁっ、いやぁっ、あぁ――っ、ダメっ! ダメだめだめぇぇっ! やぁぁぁ――――っ」
 ひときわ大きな悲鳴。それは喘ぎ声というよりも、もう絶叫だった。
 ベッドの上で大きく弾む身体。
 何度も痙攣して。背中が弧を描く。
「ひ……ぁ……ぁ…………」
 突然、がくんと力が抜ける。
 弓なりになって浮いていた腰がベッドに落ちる。
 由起は焦点の合わない瞳で天井を見つめ、荒い呼吸を繰り返していた。


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