それから引っ越すまでの毎日、二人は同じように愛し合った。
何度も、何度も。
聖美が彩を犯し、彩が聖美を犯す。
触れ合えば触れ合うほど、相手が愛おしくなった。
そして、知ってしまった。
性の悦び。
好きな人に触れられるのが、とても気持ちよくて幸せだということ。
好きな人に触れ、可愛らしい声を上げさせるのが、とても楽しくて嬉しいということ。
だから――
以来、無心ではいられなくなってしまった。
――寝技の時に。
どうしても想い出してしまう。意識してしまう。
女の子の身体の温もり、柔らかさ、滑らかな手触り。
甘い吐息、切ない喘ぎ声。
そして……あの快感。
身体が覚えてしまっている。
だから、寝技の時に平常心ではいられない。どうしても雑念が混じってしまう。
立ち技の切れが増したのは、その副作用がいい方向に働いた結果だった。必要以上に接触するのを避けたいという想いがスピードにつながって、組むか組まないかのうちに矢継ぎ早に繰り出す足技、投げ技が、相手を翻弄するようになった。
しかし寝技ではそうはいかない。最長で30秒間、身体を重ねていなければならない。
それは今の聖美にとって、長すぎる時間だった。
稽古を終えて寄宿舎に帰り、食事や入浴を済ませてベッドに入ると、記憶が鮮明に甦ってくる。
どうしても考えてしまう。今日の稽古のことを。
聖美と組み合った凉子の体温、呼吸、汗の匂い。
想い出してしまう。
想い出しただけで、火照ってしまう。
下半身が、熱く疼いてしまう。無意識のうちに、手がその部分に触れてしまう。
(ダメだよ、こんなこと……)
自分に言い聞かせても、止まらない。止められない。
手が動いてしまう。
指が動いてしまう。
脚を閉じてぎゅっと手を挟んでも、わずかな隙間の中で指は動き続けている。そうなると脚を閉じたことさえ、火照った部分に手をより強く押しつける結果になってしまう。
「……っ、ん……」
込み上げてくる熱い吐息を、歯をくいしばって押しとどめる。
声は出せない。
ルームメイトの規則正しい寝息に注意を払いながらも、手の動きは止まらない。
記憶が、感覚が、甦ってくる。
凉子の体温、呼吸、匂い。
凉子に触れられた肌が、火傷したように熱い。
一方の手で、その部分に触れる。反射的に身体が震える。そこはまるで性感帯のように敏感になっていた。
もう一方の手は、脚の間で小刻みに動き続けている。
「は……ぁ……っ!」
その手が、指が、凉子のものであると妄想してしまう。
凉子の指が、エッチな部分で動いている。
――したい。
凉子と、したい。
彩としたみたいに。
抱きしめたい。抱きしめられたい。
触れたい。触れられたい。
キスしたい。キスされたい。
舐めたい。舐められたい。
凉子に可愛い声を上げさせたい。聞かせて欲しい。
そして、凉子の愛撫で喘ぎたい。
もっと、もっと。
「んっ……ん、ふっ……ぅんっ」
いつしか、指を中に挿れていた。
熱く湿った粘膜をかき分け、奥深くまで挿入する。
中をかき混ぜる。
より強い快感を得ようと、下半身が勝手に動いてしまう。
凉子の指で、こうして欲しい。
凉子の中を、こうして触れたい。
「はぁ……はっ、ぁ……うっ……うぅんっ!」
大きな声を上げないように俯せになって枕を噛みしめながら、聖美は絶頂を迎える。
それでも指は止まることなく、さらなる快楽を求めて蠢いていた。
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