〜1〜


「兄貴ぃ、昨日のNBA録画してある? 見せてよ〜」
 日曜の午後、あたしはそう言って兄貴の部屋に入った。ドアは開けっ放しだから、ノックもしない。
 ベッドに寝そべって車の雑誌を読んでいた兄貴が、寝ぼけたような返事をする。
「ん〜? ああ…その辺にテープあるだろ」
「どれ?」
 う〜ん、大学生って金持ちだな〜。
 大画面の平面ブラウン管テレビに、ビデオデッキが二台。WOWOWもスカイパーフェクTVも加入してる。
 いいなぁ、中学生だとバイトもろくにできないしね。
 あたしは、テレビの周りに散乱しているビデオテープをかき回した。
 一本ずつラベルをチェックして…
「どれよ〜? もぉ、アダルトビデオばっかりじゃない!」
 『美尻診察室』とか『巨乳搾り』とか、そんなタイトルのテープばかりが転がっている。
 まったく、これだから男ってのは…。
 年頃の可愛い(ここ強調!)妹がいるんだから、せめて隠すそぶりくらいはしてほしい。
「兄貴ってモテるくせに、ど〜してこ〜ゆ〜の好きなの? セックスする相手に不自由してるわけでもないのに」
 妹のあたしが言うのもなんだけど、兄貴って結構イケてると思う。
 背も高いし、顔だってなかなか…。ま、あたしと血がつながってるんだから顔がいいのは当然だ。
「ば〜か」
 雑誌から顔を上げて、兄貴が笑う。
「これはこれで、自分でするのとはまた違った楽しみがあるんだよ」
「そ〜ゆ〜もの?」
 十四歳でバージンの乙女には、その理屈はよくわからない。
 経験豊富な兄貴が言うんだから、そういうものなのだろうと思っておく。
「…で、どれが面白いの?」
「お前…、NBA見に来たんじゃないのか?」
 兄貴ってば呆れ顔で言う。
 だけどいいじゃない。女子中学生だって、アダルトビデオに興味はある。
「NBAはいつでも見れるもん。でもこれは、親が留守のときじゃないと落ちついて見れないっしょ」
 今日は日曜日。父さんと母さんは一緒に買い物に出かけていて、夕方まで帰らない。
 あたしは適当なテープをデッキにセットした。ライトプロテクトされてたらしく、自動的に再生が始まる。
「うわ〜、いきなりコレ?」
 テープは巻き戻してなかったみたい。
 いきなり、男の人の……アレ…つまり、その、ペニス…を口にくわえた女の子が大アップで表示されて、さすがにちょっと引いてしまう。
 モザイクもぼかしもなんにもない。裏ビデオ、ってヤツ?
 男の人のアレ、初めて見た。いくら男の兄弟がいたって、勃起しているところを見る機会なんてない。
 女の子はまだ若い。高校生くらいかもしれない。
 それに、結構可愛い。こんな子が裏ビデオなんて出るんだ。
 白い半袖のセーラー服を着てるけど、下半身は裸。そして、男の人のアレをペロペロと舐めている。
 気持ち悪くないのかなぁ。あたしだったら…ちょっとヤかも。
 なのにビデオの女の子は、さもおいしそうに舐めまわして、そのままぱくりと口に含んじゃった。
 根元まで飲み込んで、また吐き出して…。
 涎で、ヌメヌメと光っている。
 くわえたまま、上目づかいに男の顔を見上げる。
 なんだか、すごく艶めかしい表情。
 女の子が、頭を動かし始める。
 だんだん速く。
 やがて男が女の子の頭をつかんで、自分で腰を振り出した。
 乱暴に口を犯されて、女の子が小さく呻き声を漏らす。
 と、男がいきなりアレを口から抜いた。
 同時に、先っぽから白いものがビュッビュッと飛び出して、女の子の顔にかかる。
 どろりとした白い液体が、顔中を汚している。
 …ああ、射精したんだ。
 ワンテンポ遅れて理解した。だって、初めて見たんだもの。
 あたしは呆然と、その映像に見入っていた。
 すると…
 え、ウソ、ヤダ!
 女の子が、顔にかかった精液を手でぬぐい取って、ペロペロと舐めてる。
 信じらンない。あんなものを。
 兄貴に聞いてみる。
「…ね、せ〜えきって、おいしいの?」
「知らん、オレは舐めたことないぞ」
 …それもそ〜よね。


『ね、今度は私のを舐めて』
 ビデオの女の子が言っている。
 ベッドに仰向けになった女の子の脚を、男は大きく開かせる。
 あ、毛がないや。剃ってるのかな。
 だからもちろん、アソコは丸見え。
 そこは赤くて…まさに肉の色って感じ。
 なんだかグロテスク。
 あたしのもあんななのかな?
 男は指で割れ目を開くと、そこに顔を押し当てた。
 カメラアングルが変わって、その部分がアップになる。
 舌が、中に入ったり出たりしている。
 ピチャピチャ、クチャクチャといやらしい音をたてて。
『あっ、あぁ〜! あぁ、いいっ! いいの!』
 身体をのけぞらせて、女の子が悶えている。
 自分で腰を浮かせて、アソコを男の顔に押しつけるようにしてる。
『あんっ、あぁ、あ〜! あぁ…あん』
 鼻にかかった甘ったるい声は、一瞬も止むことはない。
 男の舌が、めまぐるしく動いている。
 舌の動きに合わせて、女の子は声を上げる。
 そんなに、気持ちいいんだ…。
 あたしだって、ひとりエッチはしたことある。
 確かに気持ちイイけど、あんなに声が出るほどじゃない。
 やっぱり、自分でするのとは違うのかな。
『あぁ〜ん…』
 男が今度は、指を中に入れている。
 クリトリスを舐めながら…。
 人差し指と中指を出し入れしている。
 その指が、濡れて光っている。
 女の子の声が、より大きくなる。
『ねぇ、ちょうだい。おっきいのをちょうだい!』
 その声に応えて、男が姿勢を変える。
 女の子のアソコに、大きくなった自分のアレをあてがって…。
 …挿入した。
 あんな大きいのが入っちゃうなんて、なんだか信じられない。
 根元までズブズブと埋まっていく。
 女の子が、感極まったような声を漏らす。
 腰を前後に動かし始める。
 あんなに太いものが、中に入るなんて…。
 それをあんなに激しく動かすなんて…。
 それが、あんなに気持ちよさそうなんて…。
 あたしには刺激の強すぎる映像だ。頬が紅潮しているのがわかる。
 男の手がセーラー服をまくり上げて、女の子の胸を揉む。
 大きい。Dカップはありそうだ。Aカップのあたしにはちょっと悔しい光景。
 そういえば兄貴がよく家に連れてくる女子大生も、大きな胸だったっけ。あたしも大学生になったら、あのくらいになれるのかなぁ。
 う〜ん、でも、クラスメイトでも大きい子はもう充分大きいし、やっぱり生まれつきのものなのかな。うちの母さんも小柄で、胸はあまり大きくないし。
 あたしが胸の大きさで悩んでいる間も、テレビの画面ではいやらしい光景が続いている。
 何度も身体の向きを変えて、激しく動いている。
 大きな胸をゆさゆさと揺らして。
 いやらしい声を上げて。
 口から涎まで垂らして。
 あたしは、画面から目を離せなかった。
 頬が真っ赤になってる。
 喉がカラカラで、頭がぼ〜っとしてる。
 まるで熱でもあるみたい。
 心臓が、すごくドキドキしてる。
 そして、
 そして…、
 それを認めるのはすごく恥ずかしいけれど…。
 でも、ごまかしようもない。
 あたし…濡れちゃってる。
 触らなくたってわかる。
 こんなの初めてってくらい、すごく濡れてる。
 エッチなビデオを見て、興奮しちゃってる。
 あたしはまだ中学二年生で、まだバージンなのに。
 それだけじゃない。
 あたし…
 あたし…
 とんでもないこと、思いついちゃった。
 理性が止めるより先に、その言葉が口から出ていた。
「兄貴ぃ…、あたしと…エッチしない?」
 少しだけ、声が震えていた。



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