〜6〜


「イッちゃったのか?」
 耳元で囁く兄貴の声が、あたしの意識を現実に引き戻した。
「…ぅ…ん」
 あたしは曖昧に返事をした。
 まだ頭がぼんやりしているし、アソコはじ〜んと痺れたような感じだった。
 身体に力が入らなくて、全身がグニャグニャのタコにでもなったような気分。
 凄かった。何が起こったのかわかんなかった。
 これまで自分でしてて「イッちゃったのかな?」と思うようなときはあったけど、あんなに凄いのは初めて。
 アソコがびちゃびちゃになっているのが、触らなくてもわかる。
「感じやすいんだな、香奈」
 笑いを堪えているような顔で、兄貴が言う。
「まだ中学生でバージンのくせに、失神するくらい感じるなんてエッチなヤツだなぁ」
 恥ずかしい。
 兄貴の顔をまともに見られない。
 自分がどれほど激しく乱れてしまったのか、はっきりと憶えているから。
「あ、兄貴が上手すぎるからいけないんだ! いたいけな女子中学生をこんなにするなんて、この変態!」
「ほぉ、自分のエッチ好きは棚に上げて、俺のせいにするのか。そ〜ゆ〜ヤツはこうしてやる!」
 兄貴の指が、また入ってくる。
「や…やぁ…やめてぇ…」
 これ以上されたら、ホントにおかしくなっちゃうよぉ。
 少し休ませてよぉ…。
 なのに、グニャグニャのタコだったはずのあたしの身体は一瞬で緊張を取り戻し、兄貴の愛撫に敏感に反応した。
「…ダメ…ダメ…あたし、ヘンになっちゃう…。あぁっ…あ…もう…もう…はあぁぁっ!」
「ほら、自分がいやらしい女の子だって認めるか?」
「ちがう…ちがうよぉ…。あっ…兄貴が…ぁ、上手…過ぎ…きゃあぁぁっ!」
 引き抜かれた指が、今度はクリトリスを攻撃目標に選ぶ。
 親指と中指で器用に包皮を剥いて、露わになった肉色の真珠をヌルヌルの人差し指がくすぐる。
「ひゃあぁぁぁっ……ひぃっ…やぁっ!」
 あたしは喘ぎ声というよりも、悲鳴を上げていた。
 気持ちイイとか、感じるとか、もうそんな次元を超越してしまっている。
 これ以上続けられたら、本当に死んじゃうかもしれない。
 もう…許して…。
「そろそろ、いいか?」
 兄貴が聞いてくる。
 いいかって…いったい何が?
 …って、そういえばまだ、一番肝心なことをしていない。
 指と舌でいやというほど感じさせられてしまったけれど、今日の目的は「その先」だったんだ。
「…ぅ…ん」
 あたしは小さくうなずいた。
「…して。…セ…クス…して…。…優しく……してね」
 いよいよだ。
 いよいよ、本当のセックスだ。
 兄貴が…兄貴のペニスが、あたしの中に入って来る。
 先刻、口でくわえたときのことを思い出す。
 すごく、大きかった。
 あの大きなものが、あたしの中に入ってくる。
 その時のあたしの心境は、期待が七割、不安と恐怖が三割といったところだった。
 指や舌での愛撫は、すごく気持ちよかった。
 だから、アレが入ってきたときはどんな風に感じるんだろうって期待が七割。
 あんなに大きなモノが、本当にちゃんと入るのかって不安と恐怖が二割。
 残りの一割は…、あたしの…で兄貴がちゃんと感じてくれるかどうかっていう不安。
 あたしの…オマ○コ…が男の人にとって気持ちのいいものなのかどうか、こればかりは試してみなきゃわからない。
「ゴム、付けた方がいいな」
「…いらない」
 兄貴の気配りは当然の事だったけれど、たしは首を横に振った。
「今日は大丈夫…だし…。初めての時は…余計なものない方がいい…」
 いわゆる安全日が「絶対に安全」ではないことは知っている。
 だけど初めてはやっぱりゴム越しじゃなくて、ちゃんと、直の感触を味わいたい。
 ペニスと膣の、粘膜同士のが触れあう感覚。
 中に、射精される感覚。
 それを体験したい。
「そのまま…入れて…」
「じゃ…いくぞ。力抜いてろよ」
 兄貴の指が、あたしの割れ目を大きく開かせる。
「ひぁっ…」
 あそこに、指とも舌とも違う何かが押しつけられた。
 割れ目に擦り付けるように。
「はぁぁ…は…ぁ」
 気持ちイイ。
 膣口やクリトリスが、アレで擦られている。
 溢れるほどにあそこを濡らしている愛液を塗りつけて、滑りをよくしているのだろうか。
 すごく、気持ちイイ。
 指の時は少し痛みがある。それよりもっと優しい刺激で、そして舌より質感がある。
 これって、すごくイイ。
 期待に胸が膨らむ。
「気持ちイイだろ。これが、今から香奈の中に入るんだぞ」
 あたしは無言でうなずいた。
 それが、来て欲しいっていう合図。
「あ…はぁっ!」
 入口に、アレが押しつけられた。
 だんだん力が込められて、膣口が押し広げられていく。
「あぁ…あぁん!」
 もう、これ以上は無理ってくらい、いっぱいに広げられているように感じる。
 なのに、肝心のものはまだほとんど中に入っていなくて、ただ入口に押しつけられているだけみたい。
 やっぱり、入らないのかな…。
 ちらりとそう思ったけれど、それは間違いだった。
 実は、ここからが本番だったのだ。
「あぁっっ!」
 これ以上は無理って思ったのに、そこからさらに入口が広げられる。
 もう本当に、あと一ミリでも広がったら、あそこが破けてしまうんじゃないかって気がした。
「あぁぁっっ! あぁぁぁぁっっ!」
 びりびりと、突っ張るような痛みが走る。
 そして…。
 あたしの体内目指して、本格的に侵入を開始したものがある。
 最初は入口だけが無理やり広げられていたのに、裂けてしまいそうな痛みが、だんだん奥の方へと進んでくる。
 ズル…ズルリ…と。
 ものすごい抵抗感がある。
 あたしはいやというほど濡れて、潤滑剤には不自由しないはずだけれど、やっぱり絶対的なサイズが不足しているのだろう。
 だけど…。
「いぃっ…ぐ…あぁ…うん…うぅ…」
 無理、ではない。
 痛いけれど。
 きついけれど。
 ほんの少しずつだけど。
 それは確かに、あたしの中へと入ってきている。
 まるで、杭でも打ち込まれているみたい。
 あたしは、ぴくりとも動けない。
 唇を噛んで、小さく震えて、初めての感覚に耐えていた。
 固い。
 そして、熱い。
 無理やり押し広げられて、身体の中から裂けてしまいそうな痛み。
 そして、お腹が苦しいような、形容しがたい圧迫感。
 ズブ…ズブ…と最奥へと侵入してくる。
「うぅ…、あぁ! うん…!」
 兄貴はあたしの一番深い部分までたどり着いて、そこで一度動きを止めた。
「は…ぁ…。ふうぅ…ぅ」
 入ってくる間、ほとんど息を止めていたあたしは、大きく息をついた。
 それでほんの少しだけ、痛みも和らぐ。
「痛い?」
 兄貴が、指先であたしの涙を拭いながら聞く。
 痛みのあまり、いつの間にか涙が溢れていた。
「うン…」
 泣きながら、それでもあたしは何とか笑顔を作る。
 確かに痛くて、我慢できないほどだけれど。
 だけど、止めてほしくない。
 あたしは痛み以上に、えもいわれぬ充実感を味わっていた。
 たった今、あたしはバージンを失った。
 女の子から、女への一歩を踏み出した。
 しかも相手は、大好きな兄貴。
 ほんの少し優越感もある。
 クラスの中で、経験済みの子はまだほんの一握りしかいない。
 競争することでもないけれど、人よりも先に経験するのって気分がいい。
 それに経験済みの子だって、その相手は兄貴ほどカッコイイ男の子ではあるまい。
 あたしはシーツを握りしめていた手を放し、ぎゅっと兄貴にしがみついた。
「…痛いけど…でも、それだけじゃないの。よくわかんないけど、なんだかスゴイの…」
 耐えがたい痛みと、圧迫感。
 あたしの体内には他に、それとは別の曖昧な感覚が存在していた。
 それははっきりと「快感」と呼べるようなものではない。
 だけどきっと、この不思議な感覚はいずれ「女の悦び」へと昇華するものなのだろう。
「はぁぁぁっ! あぁぁっ!」
 兄貴が、ゆっくりと動き始める。
 腰の動きに合わせて、声が出てしまう。
 それはほとんど悲鳴だ。
 じっとしている状態でも限界まで広げられているあたしのオマ○コは、ゆっくりとした動きでも悲鳴を上げる。
 だけど、ただ痛いだけではない。
 あたしを貫いているものが動くことで、痛みが増す以上に、あの曖昧な快感が何倍にも強くなるのだ。
「はぁぁっ! あぁッ! あン! あぁ〜っ! あぁぁ〜っ!」
 あたしは、兄貴の身体に回した腕に力を込めた。
 そうしていないと本当に。
 本当に。
 おかしくなっちゃいそう。
 あたしの身体、壊れちゃいそう。
「あたしの…気持ちいい? どんな感じ?」
「すごく濡れてて…ギュウギュウと締め付けてくる。とっても、気持ちいいぞ」
「えへ…よかった…」
 少し安心した。
 あたしのはとりあえず、そう悪くはないらしい。
「あ…ん!」
 不意に、足首を掴まれた。
 そのまま、身体をくるりとひっくり返される。
「あぁぁっ…ぁん!」
 入ったままだから、あそこが捻られるみたい。思わず悲鳴を上げる。
 身体の向きを変えるとき、壁に掛かった大きな姿見が目に入った。
 あたしが、鏡に映っている。
 ベッドの上に俯せになって。
 お尻を高く突き上げて。
 後ろから、兄貴に貫かれてる。
 セーラー服を着たまま。
 スカートがまくり上げられて、お尻が露わになっていた。
 既視感。
 先刻のビデオと、同じような光景。
 自分が、とてもいやらしいことをしているんだって実感してしまう。
(恥ずかしいよぉ…こんなカッコ…)
 なのに、鏡から目を離せない。
 顔をそむけることも、目を閉じることもできない。
 兄貴の腰が、ゆっくりと前後に動いている。
 あたしの中に、兄貴のが出入りしているのが見える。
「あぁっ! あぁぁっ! はぁっ! ん…ぁっ!」
 深く突かれるたびに、声が出てしまう。
 大きな口を開けているあたしが、鏡に映っている。
 セックスしているあたしが、鏡に映っている。
 兄貴とセックスして、初めてなのにバックからやられて、喘ぎ声を上げている。
 鏡の中に、いやらしいあたしがいる。
 信じられない。
 こんなこと。
 だけど本当のこと。
 あたしってば、鏡に映った自分の姿に興奮してる。
 いやらしい子…。
 だけど…。
 興奮しているのは、あたしだけじゃなかったんだ。
「香奈…」
 背後から、兄貴の声がする。
「…な…あ…なぁに?」
「俺、もう我慢できないよ。もっと動いていいか?」
 幾分うわずった声で聞いてくる。
 兄貴は初めてのあたしを気遣って、これまでできるだけ優しくしてたんだろう。だけどだんだん興奮してきて、物足りなくなったみたい。
 無理もないと思う。兄貴の動きは、ビデオよりもずっとゆっくりだったもの。
 それでもあたしには、強すぎるほどの刺激だったんだけど。
 だけど…。
「…う…ん」
 あたしは、小さくうなずいた。
 もう大丈夫。
 もう、あんまり痛くない。感覚が麻痺してしまっただけかもしれないけど。
 だけど、兄貴に満足してもらいたいから。
 あたしの中で、ちゃんとイッて欲しいから。
「うん…大丈夫。…激しく、して。あたしのこと…、めちゃめちゃにしてイイ…よ」
「そんな安請け合いして、後悔するなよ」
 いや、言ってすぐに、ちょっと言い過ぎだったかと後悔したんだけれど。
 もう遅い。
「ん…ふ…んぅん!」
 自分で動いて、あおむけに戻った。
 バックからってすごく興奮するけど、最後はやっぱり、ちゃんと抱き合う形がいい。
 しっかりと、兄貴の首にしがみついた。
 兄貴の腰の動きが少しずつ速く、そして大きくなってくる。
「はぁぁっ! あぁっ! は…あぁん!」
 壊れてしまいそう。
「すごい…あぁっ…すごい!」
 身体の中を、めちゃめちゃにかき回されている。
 痛い。
 すごく痛くて…。
 そして、少し気持ちイイ…ような気がする。
「あぁ〜っ兄貴ぃ…ああぁっ…あぁぁぁっっ!」
 知らず知らずのうちに、腕に力が入る。
 あたしの声は喘ぎ声なんて生やさしいものじゃなくて、もう絶叫に近い。
「あぁ…イイぞ、香奈…イイ…」
 兄貴も声を出す。
「イイの? ねぇ、あたしの、気持ちイイの? イッちゃうのっ?」
「いい…イクぞ!」
 動きが一層速くなった。
 一番、奥深い部分まで突き入れられる。
「んっ…あっ…あぁっ、あぁぁ〜っっ!」
 ビクン、ビクンッて、あたしの中で脈打ってる。
 熱い液体が勢いよく噴き出して、あたし中を満たしていくのを感じる…。
 兄貴が、ふぅっと大きく息を吐き出した。
 終わった…んだ…。
 頭の中が、真っ白になっていく…。


 コトが終わった後も、あたしはしばらくそのまま兄貴にしがみついていた。
 まだ、入ったまま。
 兄貴のモノが、あたしの中を満たしている。
 それでも少し小さく、そして柔らかくなってるから、ぜんぜん痛くない。今くらいの大きさが、あたしにはちょうどいいのかも。
 こうしていると、兄貴とつながっているという安心感がある。
 兄貴とあたしの身体が、一つになっている。
 相手の体温と鼓動が感じられる。
 しばらくそうしていて、ふと気付くと、兄貴が優しい表情であたしの顔をのぞき込んでいた。
 あたしは頭を持ち上げて、兄貴と唇を重ねた。
「どうだった、初体験の感想は?」
「……すごかった」
 小さな声で答える。
「やっぱり、兄貴としてよかった。とっても…すごかったよ。悪くない初体験だった」
「香奈も可愛かったぞ。思い切ってしてよかった。お前のバージンを他の男に奪われるなんて、やっぱり癪だもんな」
「……あのね…今度また…してくれる?」
 あたしは恐る恐る聞いた。
 ひょっとしたら、今日だけ特別…かもしれないと思って。
 だけどあたしは、また兄貴としたい。
 今日はただ、初体験したっていうだけだから。
 もっともっと、セックスの本当の気持ちよさを教えて欲しい。
 そして兄貴にも、もっともっとあたしを感じて欲しい。
「もちろん、俺もしたいさ」
 兄貴がうなずいた。
「香奈さえよければ、お前に彼氏ができるまではいつだってしてやるよ」
「…ホントに?」
「なんなら、今すぐでもいいぞ」
「え…?」
 その言葉の意味を理解するよりも先に、あたしの中では兄貴のモノが、また固さと大きさを増しはじめていた。



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