七月。
夏休みも目前に迫ったある日のこと。
「委員長って、八月の第一週に予定あるか?」
いつものように夕方の散歩をしている途中、上村くんに訊かれた。
「え? ……別にないと思う……けど?」
「無理に、とは言わないけど。迷惑じゃなかったら、一週間くらいラッキーの世話してくれないか?」
「え?」
「家族で、旅行に行くから……」
なるほど。旅行の間、ラッキーの餌や散歩の世話を頼みたいのだろう。まだまだ、ペット同伴で泊まれるホテルとなると限られてしまう。
「旅行って、どこへ?」
「沖縄」
「沖縄かぁ、いいねー。うん、いいよ。ラッキーの面倒は私が見るから」
私は内心、飛び上がりたいくらいに喜んでいた。だけどそれが顔に出ないように気をつけて、何気ない風を装って応える。
「サンキュ。ラッキーも、ペットホテルなんかより気心の知れた委員長の方がいいだろうし。家の合鍵渡しておくから、エサと散歩、頼むわ」
上村くんにしても、大切なラッキーを知らない人に預けたくはないのだろう。
「ん、まかせて」
できるだけ自然にうなずこうとしたけれど、どうしても顔がにやけてしまう。
なんという幸運だろう。
ラッキーと二人きりになる機会なんてそうそうないだろうと思っていたのに。
まさか、こんな素晴らしいチャンスが訪れるなんて。
上村くんの家で、誰にも邪魔されずに一週間も一緒に過ごせる。
あの、めくるめく快感を存分に味わうことができる。
そう考えただけで、上村くんの前だというのに濡れてしまいそうだった。
「嬉しそうだな」
「え?」
ギクッ!
上村くんてば、意外と鋭い。
「そ、そうかな……。それよりも、ちゃんとお土産買ってきてね」
私は必死に話題を逸らした。
「面倒なこと頼んで、ごめんなさいね」
そう言ってぴょこんと頭を下げた上村くんのお母さんは、小柄でぽっちゃりとした可愛い感じの人で、上村くんとはあまり似ていなかった。それをいったらお父さんも中肉中背で、体格のいい上村くんとは似ていない。
だけどOLをしているというお姉さんは、背の高い、ややきつい顔立ちの美人で、上村くんと似た雰囲気がある。この姉弟は隔世遺伝なのかもしれない。
「トシってば、ずいぶんと可愛らしい彼女掴まえたじゃない?」
お姉さんが上村くんの背中を小突いて、からかうように言う。
なにか誤解されているみたいだけど……まあ、いいか。確かに「ただのクラスメイト」に、一週間もペットの世話を頼むなんて考えにくい。
あからさまに否定するのもどうかと思って、私はただ、曖昧な笑みを浮かべていた。
ラッキーと並んで、一家四人を乗せて走り去る車を小さく手を振りながら見送る。角を曲がって視界から消えたところで、私はラッキーを見た。
ラッキーも、私を見ている。
なんとなく、笑っているような表情で。
私の口元も緩む。
心が、通じ合ったような気がした。
「……したい?」
小さな声で訊く。
ラッキーが尻尾を振る。
私も、したい。
上村くんたちが出掛けてすぐにそういうことを始めるというのも、なんだか気恥ずかしいものではあったけれど、もう待てない。
早くラッキーと二人きりになって、楽しいことしたい。
「行こ」
私はラッキーを促して、家の中に入った。
何度か入ったことのある、上村くんの部屋。
パソコンを載せた大きめの机に、スチール製の本棚に、セミダブルのベッド。
テレビとビデオデッキとゲーム機。
壁にはポスターが二枚。Jリーガーと、水着のアイドル。
多分、高校生の男の子としては、平均的な部屋なのだろう。
私がベッドに腰掛けると、間髪入れずラッキーが飛びついてくる。私よりもラッキーの方が体重が重くて力も強いから、簡単に押し倒されてしまう。
「や……、ラッキー、慌てないで……」
マウントしてくるラッキーを押しのけてなんとか上体を起こし、首に腕を回した。
「あんまりせっかちだと、嫌われるぞ。女の子には、ムードが大切なんだから」
耳元でささやいてから、キスをする。キスといっても犬相手では「唇を重ねる」って感じじゃなくて、お互いの口や舌を舐め合う形になる。だけどこれはこれで、けっこう気持ちいい。
「服脱ぐから、ちょっと待って」
一度ラッキーから離れた私は、カーテンを閉めて手早くシャツとスカートを脱ぐ。
ブラジャーも外して、最後に小さく深呼吸してから、ショーツを下ろした。
「……お待たせ」
全裸になってベッドに座る。おずおずと脚を開くと、すぐにラッキーが顔を押しつけてきた。
「は……ぁんっ!」
舌が触れる。
長くて、しなやかで、とても器用に動く舌。
人間の男の子や自分の指では経験したことのない、至上の悦びを与えてくれる舌。
「はぁっ……、あぁぁ……、あぅんっ! あんっ!」
ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ。
リズミカルに、人間には真似のできない速い動きで、割れ目全体を舐め回す。
電流のように身体を貫く快感に、上体が仰け反る。どさりと仰向けになった私は、ラッキーの動きに合わせるように小刻みに腰を動かした。
「あぁっ! あぁっ! いい……いいっ! はぁぁ……もっと、もっと……」
前回と違い、今日はいくら声を出しても平気。私はなんの遠慮も恥じらいもなく喘ぎ、おねだりする。
ラッキーはそれに応えて、さらに舌の動きを加速する。
「はぁぁっ、あぁっ、んんぅっ、くっ! はぁんっ!」
下半身が、とろけていくみたい。
おびただしい量の蜜が、身体の中から溢れ出すのを感じる。ミルクを飲むときのように、ラッキーの舌がそれをすくい取る。
「美味しい? ね、私の……美味しい? もっと舐めて」
脚をいっぱいに開いて、舌をできるだけ奥まで導き入れようとする。
同時に、私は両手で自分の胸を包み込んだ。
掌の中で柔らかく潰れる胸の感触が心地よい。腰の動きに同調するように、乳房全体をこね回す。
「はぁっ! はぁっ! はぁぁっ! あぁぁんっ!」
気持ちいい。
気持ちよくて気持ちよくて……おかしくなっちゃいそう。
まだ、始めて何分にもなっていないはずなのに、今にもいってしまいそう。
もう……だめ。
もう少し我慢しようかとも思ったけど、とっくに限界を超えている。このままいっちゃうしかない。
「んんっ! あぁっ! あぁぁっ! はぁぁっ、あぁぁぁ……ああっっ!」
一瞬、全身が痙攣する。胸に、痛いくらいに指がめり込む。
背中を浮かせて大きく身体を仰け反らせて、やがて力が抜けてどさりと落ちた。
「あぁ…………はぁぁ…………」
私の、女の子の部分で爆発した快感が、全身に拡散していく。その余韻に身も心もとろけながら、大きく息を吐き出した。
あっという間に達してしまった。
こんなに短い時間でいってしまったのは初めてだ。
この前、ラッキーに舐められたときよりもさらに早い。あの時は初めてだったし野外だったから、必要以上に緊張していたのだろう。
今日は本当に、なんの歯止めもない状態だった。
「……最……高……素敵よ、ラッキー」
だけどラッキーは、私がいってしまったことなど気付いていないかのように、まだ舌を動かし続けている。溢れ出してくる白濁した蜜を、一滴残らず舐め取ろうとするかのように。
「あ……ちょ……と……。待っ……あぁっ!」
ラッキーは待ってはくれない。疲れることを知らないその舌は、かつてないほどの絶頂を迎えて余韻に浸っていた私に、すぐまたスイッチを入れる。
まだ回復しきっていないのに、強引に感じさせられてしまう。
「やん……ラッキー……、や……んっ! んんっ、あぁん! うぅっんっ!」
こんなにすぐに、二回目なんて。
なのに、こんなに感じちゃうなんて。
「やぁぁっ! あんっ! あぁん!」
私ってば、ものすごい淫乱になってしまったみたい。
だけど心の奥底ではどこか、そんな自分に酔ってもいる。
もっといやらしいこと。
もっと恥ずかしいこと。
もっと気持ちいいことしたい。
自分の指で広げて、奥の奥まで舐めてもらう。
はしたない声を上げて。
激しく腰を振って。
「あぁ……う……っ! ……ぁっ! ――――――――っ!」
最後はもう、声にならなかった。
一度目の絶頂からほんの数分で、私は今日二度目の、そしてもっと高いところにある頂に達してしまった。
「や……ん……ラッキー……だめぇ……」
ぴちゃぴちゃ、くちゅくちゅという湿った音は、まだ続いている。
ラッキーはその行為をやめるどころか、いっそう熱心に舐め続けている。
荒い息づかいが聞こえる。
「そう……だよね……。私ばっかり、気持ちよくなってちゃ、ダメよね」
普段はほとんど身体の中に隠れているラッキーのペニスが、大きく勃起している。それは赤い、肉の色をしていた。
「ラッキーも……気持ちよくしてあげなくちゃ」
私の身体はまだ全然回復していなくて、まるで力が入らなかったけれど、なんとか身体の向きを変えて俯せになる。
舐めてもらうだけじゃなくて、ラッキーと本物のセックスをする。そのことには少しも抵抗を感じなかった。
そうするのが当たり前のように、ちゃんと犬と同じく四つん這いになって。
「……いいよ。ラッキー、来て」
お尻を小さく振って、ラッキーを誘う。
ラッキーはすぐさま、私の上にのしかかってきた。
私の胸のあたりを抱える前足は、驚くほど力が強くて苦しいくらい。
身体が、揺れる。ラッキーが激しく腰を振っている。
荒い息が、うなじにかかる。
ペニスが何度もあそこに当たる。だけどめちゃくちゃに腰を動かしているので、なかなかうまく入らない。これが人間の男の子なら、ちゃんと入ってから動きはじめるんだけど。
「あ……、ん……」
この状態は、私にとっても拷問だった。
今にも入りそうで、入らない。焦らされて焦らされて、たまらなくなる。
「あん……、やぁん」
私は片手を伸ばして、そっとペニスに添えた。涎を垂らして今か今かと待ちこがれている、私のエッチな口へと導いてやる。
「あ……んっ、あぁんっ!」
ぬるり……と、入った。
男性器を受け入れるのは二年ぶりなのに、意外なくらいスムーズに入ってきた。ラッキーの舌でいやというほど愛撫されて、奥の奥まで濡れそぼっていたためだろうか。
「はぁっ! あっ、あっ、あぁっ! あぁん!」
ラッキーは激しく腰を振っている。すごく速い動き。
切ない悲鳴が漏れる。
こんな動きで膣壁を擦られたら、とても正気でいられない。
「あ……っ、あっ、あぁっ……あぁっ!」
私の中で、ラッキーが大きくなっていく。
それは最初、親指より少し太いくらいだったはずなのに、今は間違いなく、もっと大きく膨らんでいる。
「すごいっ……、すごいっ、イイの……。あ……あ……っ!」
腕で身体を支えるのが辛くなって、私は枕の上に突っ伏した。膝を立ててお尻だけを高く突き上げた格好で、ぎゅっとシーツを握りしめる。
信じられない。
私ってば、犬とセックスしている。
ラッキーと、一つにつながっている。
それは信じられないくらいにエッチで、変態的で。
そして最高に気持ちいい行為。
「ラッキー! あぁ! ラッキー!」
私の中で、ラッキーが暴れている。いつもと同じ、やんちゃぶりだ。
「あぁっ、ラッキーも気持ちいいの? ね、私の……気持ちいい?」
恥ずかしい四文字言葉を口にしながら、私はふと思った。
ラッキーは、初めてなのだろうか。だったら嬉しいな、と。
私、ラッキーの初めての女の子になりたい。
「あぁんっ! あっ! ……あぁっ! はぁぁっ、……ぁん……ん?」
ラッキーの動きはだんだん小さくなって、ぐいぐいと腰を押しつけてくるようになった。
なにか、大きくて丸いものがあそこに当たる。
それが膣口を広げて、中に入ってこようとしている。
「……あ」
それがなんであるか、思い出した。
コブ、だ。
犬科の動物は交尾の時、ペニスの根元が瘤状に丸く膨らむのだ。
それが膣内に入って栓の役目をし、途中で抜けたり、精液が漏れたりするのを防ぐ。
以前、動物もののTV番組で、キタキツネの交尾のシーンを見たことがあった。後ろ向きにつながって、牡が牝を引っ張るようにしているのに抜けないのが不思議で「キツネの牝って、そんなに締まりがイイのかな?」なんて馬鹿なことを考えたくらいだ。
その秘密が、コブだった。大きくなった時のコブの直径はペニスの何倍もあるから、一度入ったら滅多なことでは抜けない。
(どうしよう……かな)
コブまで中に受け入れてしまうかどうか、少し悩む。
正直なところ、少し怖い。実際、犬とセックスする女の人でも、コブまでは入れない人も多いらしい。
インターネットで見つけた、犬とのセックスの画像を思い出す。コブは、握り拳くらいに膨らんでいた。
あんな大きなものが入るのか……という不安もある。だけど入口さえ通り抜けてしまえば、膣の中は意外と伸縮性があるものだ。
コブがまだ膨らみきっていない今なら……。
犬とのセックスの仕方を説明していたサイトには「犬とのセックスの真の楽しみは、このコブだ」なんて事も書いてあった。
それに、ラッキーのすべてを受け入れたい、という思いもある。犬同士の交尾は当然コブまで受け入れるのだから、私もそうすることで、初めてラッキーと一つにつながったといえるのではないだろうか。
(……よし!)
私は決心した。
最後まで、結合しよう。
すべてを受け入れよう。
私は小さく深呼吸すると、下半身に手を伸ばした。
片手で、自分自身をいっぱいに広げる。もう一方の手でペニスの根本を握って、コブを押しつける。
「ん……ぅ……んんっ! くっ……ぐ、ぅぅ……んあっ!」
大きな塊が、無理やり中に入ってこようとしている――そんな風に感じる。決して広いとはいえない膣口が、広げられていく。
やっぱり痛い。ふと、初めての時の痛みを思い出した。
あの時に似ている。あの時も、こんな大きなもの絶対に入らない、と思ったけど。
それでも結構、なんとかなるものだった。
だったら、今回だって。
歯を食いしばって、コブを押す手に力を込める。
「いっ……くっ、ぅんっ! うぅぅ……ぐぁ……あ……っ! いっ、痛ぁ……ああ……うあぁぁ――――っっ!」
私は悲鳴を上げた。
本当に、裂けてしまうかと思った。
涙が溢れ出す。
ほんの一瞬、膣口は限界を超えるくらいに広がった。
ずるり……と、信じられないくらい大きな丸いものが、そこを通り抜ける。
「あぁぁ――っ! あぁっ! はぁぁぁ……っ」
コブが完全に中に入ってしまうと、ずいぶん楽になった。やっぱり入口よりも、中の方が伸縮性がある。コブの根本はまた普通のサイズだから、これで一息つける。
……と思ったのが甘かった。
痛みは急速に薄れつつあったけれど、それに代わって津波のような快感が押し寄せてきた。
考えてみれば当然のことだ。根本まですっかり入ってしまったことで、ラッキーのペニスは私の中をいっぱいに満たしている。
しかも、膣というのは奥よりも入口近くの方がずっと敏感で。
その部分で、大きなコブが限りない存在感を主張しているのだ。
「う……あぁ……あぁぁ……。ラッ……きぃ」
身体が震える。そのわずかな動きだけでも、コブでいっぱいに広げられた膣壁には強すぎる刺激だった。
なんという快感だろう。
気が遠くなる。
ラッキーは、もう先刻みたいに激しく動いてはいない。
コブまで入れてしまうと、牡犬は動きを止めるものらしい。
その方がいい。この状態であんなに激しく動かれたら、私、本当に壊れてしまう。
これで十分すぎる。ほんのちょっと動いただけで、大きなコブが膣壁を刺激する。
「はぁっ! …………あっ! …………あぁぁっ! ……あぁぁ――っ」
ちょっと動いては悲鳴を上げ、しばらくじっと休んで、またちょっとだけ動いて。
そんな動作を繰り返す。
どんどん、快感のレベルが高まっていく。
動きを止める時間が少しずつ短くなって。
腰の動きがだんだん大きくなって。
それに比例するように、私の声も大きくなっていく。
「あぁっ……うぅん! んんっ! あっ、あぁっ! はぁぁ……あぁっ! す……ごい……死んじゃう……。あっ、私ぃ……死んじゃうよぉ……あぁぁぁぁんっ!」
熱い。
熱い液体が、流れ込んでくる。
ラッキーの精液。
感じる。
私の中に、びゅっびゅって噴き出してくる。
すごく熱く感じる。犬の体温は、人間よりも高いから。
膣の中はペニスとコブで一分の隙もないくらいに満たされているから、行き場のない精液は子宮へと流れ込んでくる。
信じられないくらい、量が多い。
牡犬は、挿入している間ずっと射精を続けるのだそうだ。人間は貯めておいた精液を一瞬で射精するだけだけど、犬はセックスしながら精液を作って、それを絶え間なく放出するのだという。
その量は、人間の何倍にもなる。
私の胎内に、絶え間なく放たれる精。
普通なら溢れ出しそうなほどなのに、大きなコブが栓をする形になっているから、大量の精液は一滴の無駄もなく子宮に注ぎ込まれる。
「あ……あ……あぁぁ……。あ、私が牝犬だったら、絶対妊娠しちゃう……」
犬科の野生動物の、一回の交尾による妊娠の確率は、百パーセントに近いと聞いたことがある。今なら、それが納得できる。
これだけの量の精液で、子宮を満たされてしまうのだから。
それに、野生動物の牝が発情するのは、基本的に排卵期だし。
実は、今日の私もそう。
人間の男の子相手だったら、もろ危険日。
だけどラッキーが相手なら、妊娠の心配は万に一つもない。
「ふふ……犬とのセックスって、こーゆーメリットもあるんだね……」
とはいえ、それはほんのオマケにすぎない。
そんなことよりなにより。
とにかく、気持ちいいのだ。
人間のペニスでは絶対に味わえない感覚に、私は酔いしれていた。
子宮に注ぎ込まれる大量の精液を感じながら、腰を動かす。
「いいっ! あぁん! あぁんっ! は……あぁっ、あぁぁぁっっ!」
ただただ、欲望のままに。
一番感じる部分を探りながら、腰をくねらせる。
どう動いても気持ちいい。
どんどん、どんどん、高みに昇ってゆく。
私は枕に顔を埋めるようにして、シーツを固く握りしめていた。
だらしなく開いた口からは涎が流れ出し、枕カバーに染みを作っている。
「あぁっ! んぁぁっ! あぁっ、あぁっ、あぁぁぁっ! いいっ……いいぃっ! うぁぁぁぅあぁぁ――――っ!」
肺の中の空気をすべて絞り出して、絶叫する。
酸欠のためか、神経が焼き切れるほどの暴力的な快感のためか。
視界が急に暗くなって。
そこで一度、私の意識は途切れた。
「は……ぁっ……、はぁ……すご……い……。あっ……ぁんっ」
失神していたのは、おそらくほんの短い時間だったのだろう。
荒い息をしながら、私は目を覚ました。
全身がひどい倦怠感に包まれている。身体にまるで力が入らない。
当たり前といえば当たり前だ。
今日は立て続けに三度も絶頂を迎えて、しかも三度目はあんなに激しく、異常な行為だったのだから。
だけど……。
まだ、終わっていない。
ラッキーはまだ、私の中に入ったままだ。
大きなコブは外に出ることを拒否するかのように、膣口を塞いでいる。
「ん…………あ……ぁんっ、く……ぅん。ふぅ……ぅ」
確かこの状態は、長いときには三十分とか、一時間とか続くはず。
まだしばらくは、このままだ。
コブが小さくならない限り、私たちはつながったまま。
これも、コブを受け入れるのに決心が必要な理由のもう一つだ。
だけど逆に、それだけ長い時間、何度でも楽しめるともいえる。
一度で十分なくらい、気持ちよかったのだけど。
「う……ん……。あんっ……はぁっ!」
ほとんど休みなしに三度も達してしまった私は、もう疲れ切っていた。なのに、腰が勝手に動きを再開する。
そして、すぐまた快感の波に包まれてしまう。
「あっ、そんなぁっ……どうしてぇ……」
二年前の私は、一度終わったらそれで満足して、あとは静かに抱き合って眠るのが好きだった。続けて何度もするのは、はしたない感じがして好きじゃなかった。
なのに今日の私は、まだ快楽を貪ろうとしている。
「あぁ……んっ! んんっ……いい……いいっ!」
感じてる。
あれだけしたのに、まだ感じてしまう。
私ってば二年前の夏に比べて、すごくいやらしい女の子になっちゃったみたい。
年頃の女の子としては、素直にそれを認めるのには抵抗がある。犬とセックスして悦んでいるというだけで弁解の余地はまったくないのだけれど、乙女ゴコロは複雑なのだ。
だから、言い訳が必要だった。
「……ラッキーはまだ、終わってないもんね。ん……そう、まだ一度目ってことよ。ちゃんと最後まで、してあげなくちゃ……」
そう自分をごまかして、本格的に感じることに専念する。
「あ……んっ! はぁぁっ! んっ、ふっ……んっ! あぁんっあぁんっあぁぁんっ!」
一度終わったばかりだから少しは感度が落ちるかと思ったのに、ぜんぜんそんなことない。むしろ、先刻よりもずっと感じやすくなっているみたい。
コブの痛みがまったく気にならなくなったためだろうか。
痛みがなくなって、コブの気持ちよさだけを思う存分感じている。
だから……。
「はぁっ、あぁぁぁぁっ! あぁぁあっぁあぁぁぁ――――っ!」
四回目も、簡単に達してしまった。
結局、ラッキーのペニスがその大きさを失いはじめて私の中から抜け出たのは、その後もう一度絶頂を迎えて、今度こそ本当に失神した後だった。
「ん……、ぁ……ん……。や……ぁ」
朦朧とした意識の中で、ラッキーの舌を感じる。
終わったあと、あそこをきれいに舐めてくれてるんだ。
大量の精液と愛液と汗で、ぬるぬる、べたべたになった私のエッチな部分を。
「ん……、もういいよ」
少しずつ、意識がはっきりしてくる。私は目を開けて、ラッキーを呼んだ。
「ラッキー、こっちにおいで」
これ以上舐められたら、また燃え上がってしまいかねない。そんなにしたら、本当に死んじゃうかもしれない。
今だって、動くこともままならないような状態なのに。
「ラッキー……」
ようやくラッキーは顔を上げて、私に寄り添うように寝そべった。裸のまま、そのふわふわの毛皮を抱きしめる。胸に当たる柔らかな毛の感触が気持ちいい。
「えへへ……セックスしちゃったね。わかってるの、ラッキー? 君は、人間の女の子とセックスしたんだよ」
つぶらな黒い瞳が、こちらを見ている。
わかっているのかいないのか、ラッキーは私の鼻をぺろりと舐めた。
「ね、気持ちよかった? 私の……その、お……こ……」
もう一度鼻をぺろり。きっとこれは、肯定のサインなのだろう。そう思うことにする。
「私のこと、好き?」
やっぱり鼻を舐めようとするラッキーに向かって、私も舌を伸ばした。お互いの舌を舐め合うキスを、私たちはしばらく続けていた。
私は疲れ切って、腰が抜けていて。
そのまま裸で眠っていた。
なんとか歩ける程度まで回復したのは夕方で、シャワーを浴びた後でいつものように河川敷へと散歩に行った。
今日は、ラッキーと並んで歩くのがとても恥ずかしかった。
河川敷でよく会う犬の散歩仲間たちとも、まともに顔を会わせられなかった。
そんなことあるはずがないのに、今の赤面した顔を見られたら、今日の日中何をしていたのか、たちどころにばれてしまうような気がしたから。
だから、今日の散歩は普段より少し短めで切り上げた。
私は今日、犬とセックスをした。
本気で感じて、五回もいってしまった。
考えてみれば、それはひどく異常な行為だ。
だけど……。
だからこそ、こんなにも興奮してしまうのだろう。
学校では「まじめな委員長」で通っている私。
上村くんは私のことを「委員長」と呼ぶ。特に仲のいい友達を除く、他のクラスメイトもも。
私は長浜梨花という女の子ではなくて、クラス委員として認識されている。
そんな私が。
犬とセックスして、悦んでいる。
犬に、本気になっている。この、かわいいゴールデンレトリーバーに。
私は、そんな異常な自分に興奮していた。
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