「もうひとつ? 俺、なにかまだ問題あった?」
「ううん。……上村くんの問題じゃなくて、私の方の問題」
 実は私としては、こっちの方が前々から気になっていた大きな問題。
 ずっとつながった状態のままでこうした長話というのもどうかと思うけれど、上村くんのはそれでも私の中で元気なままだし、私も適度に気持ちいい状態が続いていた。
 ほんわかと気持ちのいい状態。すごく幸せな気分。
「こんな機会なんだから、なんでも言ってみろよ」
「うん……」
 この機会に、胸につかえていることを吐き出してしまおう。
「あのね……」
「うん?」
「私って、……上村くんのペット……だよね?」
「そうだけど?」
「……上村くんは、私の飼い主……だよね?」
「うん」
「……で、ね? ずっと思ってたんだけど、自分の飼い主を『くん』付けで呼ぶのって、ペットとしてはどうなんだろう、って」
「……ふむ?」
 上村くんがちょっと考えるような表情になる。
「私たちの関係って、単なる友達とか同級生とか、あるいは恋人とか、そういうのとは違うよね? だから、その辺りのけじめはきちんとつけた方がいいのかな……って思うんだけど?」
「要するに、今の『上村くん』って呼び方が不満なんだ?」
「ぶっちゃけて言うと、そう」
「確かにその意見は一理あるな。で? ぶっちゃけて言うと、リカはなんて呼びたいんだ?」
「…………それはやっぱり…………ご……ご、ご主人様、とか? ……あぁっ! やっぱり今のナシっっ! 恥ずかし過ぎっっ!」
 言ってしまってから、急に恥ずかしくなった。
 さすがにご主人様……じゃなくて上村くんも引くんじゃないかって、慌てて訂正する。

 だけど。

「――っ」
 上村くんが、小さく呻き声を上げる。
 私の中のものが、びくっと脈打つ。
 熱いものが噴き出してくる。
「え……?」
 これ、って……。
 もしかして……。
「……ば、ばかっ! いきなりそんな可愛いこと言うからイっちまったじゃねーか!」
「え……」
 それは、つまり……。
「……か、上村くんって……こーゆーの、……好き?」
「…………めっちゃそそられる。マジで、そう呼びたいの?」
 恥ずかしかったけれど、ここは正直にこくんとうなずく。
 口に出しては「上村くん」だったけれど、心の中ではずぅっと「ご主人様」と呼んでいた。
 ひとりエッチの時はもちろん、彼とのエッチで名前を呼ぶ時も、「上村くん」っていう単語に「ごしゅじんさま」というルビを振っていたような感覚だった。
「もう一回、呼んで」
 ぎゅうっと抱きしめられ、耳元――頭の上の犬耳ではなく私の本物の耳――でささやかれる。
「……ホントに、呼んでイイの? か……ご主人さまはいやじゃない?」
「どうして嫌がる? むしろ大歓迎だ。ほら、いきなりこんなんだぞ」
 上村くん……じゃなくてご主人様が腰を突き出す。
 私の中にあるものは、射精したばかりだというのにすごく固くて大きいままで、それがいちばん奥まで深々と打ち込まれた。
「あぅっ……ん、……ご……ご主人、サマ♪」
「う……いいな、それ」
 だんだか、よりいっそう大きくなったみたい。
「ご主人様ぁっ! そんなっ……すご……ぉっ」
「うっ……くぅっ」
 すごい。
 すごく固くて、これ以上はないくらいに大きくなって。
 私の中で、激しく暴れている。
「あぁぁっ! あぁっ、あぁんっ! ご、ご主人様っ、ご主人様ぁーっ!」
 私も一気に昂ってしまう。
 これまで、「ご主人様」という心の叫びを「上村くん」に置き換えて発生していた負担がなくなり、感じるままに反応できるのがいい。
 ご主人様のエッチはいつも激しいけれど、今日は特に凄い。お腹が突き破られるんじゃないかっていうくらいの勢いだ。
 痛いほどの、火傷しそうなほどの、激しい摩擦。それが堪らなくイイ。
 ご主人様に力いっぱいしがみつく。そうしていなければ、どこかに飛んでいってしまいそうな気がした。
「ご主人様っご主人様っ、ご主人さまぁ――っ!」
 頭の中も、視界も、真っ白になっている。
 ひと突きごとに絶頂に達するかのような感覚。
 もうだめ。
 もう死にそう。
 意識を保っていられない。
 でも……ダメ。
 まだ飛んじゃダメ。
 もったいない。
 もったいない。
 せっかく、こんなに気持ちイイのに。
 せっかく、ご主人様がこんなに激しくしてくださっているのに。
 もっと、もっと、感じていたい。
 ご主人様を感じていたい。
 もっと、もっと、ご主人様って呼びたい。
「ご主人さまご主人さまご主人様っご主人さまっ、ご主人サマぁっ、ご主人さまぁ――っ!」
 私は叫び続ける。
 狂ったように。
 これまで呼べなかった分を取り戻そうとするかのように。
 呼ぶたびに、さらに昂ってしまう。どんどん感じてしまう。
 でも、まだダメ。
 まだ落ちちゃダメ。
 もっと、もっと。
 まだ感じていたい。
 けれど……

「ご――――……ぁっっっ!」
 膣の最奥に注ぎ込まれるご主人様の精の感覚。
 それが私の意識を霧散させてしまった。
 


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