色々なことがあった一日が、終わろうとしている。
あたしはお風呂から上がった後、裸のままベッドに横になって、ぼんやりと今日の出来事を思い返していた。
そうしていると、だんだん変な気持ちになってきてしまう。まだ、感じやすい状態は継続しているようだ。身体の奥に、燠のように燻っている感覚が残っている。
いつの間にか、両手が胸を包み込んで、ゆっくりと動いていた。
なし崩し的に、ひとりエッチを始めてしまう。
最近、こんなことが多い。その日、公美さんにされたことを一つ一つ思い出しているうちに、いつしか手が動いてしまう、ということが。
だけど、今日はちょっと違う。
あたしは目を閉じて、ゆっくりと自分の胸を揉んでいた。脚をしっかりと閉じて、内腿を擦り合わせる。
「あ……ダメ……聖さん……」
思わず、声に出てしまった。
今夜、想像の中であたしの身体を弄んでいるのは、聖さんだった。
昼休みの教室。
お弁当も終わって、みんなお喋りを楽しんだり、人の宿題を写したり、昼寝したり、思い思いに好きな時間を過ごしている。
聖さんもその一人。自分の本能の赴くままに、昼休みの貴重な数十分を費やしていた。
「はーとちゃん、いつも可愛いねー」
毎日の恒例行事。背後から、あたしに抱きついてくる。
両手で胸を包み込んで、持ち上げるようにしてこね回している。
「や……あぁん。聖……さん……ダメぇ」
あたしの唇から、甘ったるい吐息が漏れる。
執拗な胸への愛撫に、だんだんオクターブが上がっていく。
「あっ……やぁ……みんな見てるよぉ……」
「いいじゃん。私たちの仲のいいとこ、みんなに見せびらかしちゃおう」
「やっ、あぁっ!」
うなじに、唇が押しつけられる。
赤い痕が残るくらいに、強く吸われてしまう。
聖さんは片手であたしの胸を弄びながら、もう一方の手で器用にタイを解き、ブラウスのボタンを一つずつ外していく。
「ヤダ! あ……聖さんのバカ!」
いつの間にか、ブラのホックまで外されていた。
カップがずらされ、クラスメイトたちの眼前で胸を露わにされてしまう。
聖さんの手が、直に胸に触れる。乳房全体を掌で包み込んで、人差し指と親指できゅっと乳首を摘む。
「やっ……っ、あっ……あんっ!」
「ほぉら、胸だけでもうこんなに感じちゃってる。ハトのきれいなおっぱい、みんなにも見てもらおうね」
「やだぁ……やぁ……聖さぁん……」
聖さんってば意地悪。みんなが笑って見ている前で、こんな恥ずかしいことするなんて。
「あ、ダメ。そんな……」
ブラウスのボタンを全部外し終わった聖さんは、今度はスカートに手を伸ばした。
ウェストのホックを外して、横のファスナーを下ろしていく。
軽い布の音とともに、ミニスカートが足元に落ちた。
あたしたちの痴態を見物している観客たちの間から、小さな歓声が上がる。
「ほら、ここも熱くなってる。触ってほしい?」
「あっ……んっ! やっ、あぁんっ!」
聖さんの指が、パンツの上を滑っていく。
割れ目の上をなぞるように。ゆっくりと。優しく、そして力強く。
気持ち、よかった。
公美さんの指と同じくらいに感じてしまう。
「ひゃっ、いぃぃっ!」
ナイロンの生地越しにクリトリスを摘まれて、あたしは細い悲鳴を上げた。身体の奥深くから、熱いものが溢れ出してくる。
しばらく下着の上からその部分を弄んでいた聖さんは、やがてパンツのゴムの部分に手をかけた。
ぎゅっと脚を閉じるあたしの抵抗も虚しく、膝の上あたりまで下ろされてしまう。濡れた部分が、外気に晒されてひんやりとした。
聖さんの指が、直に触れてくる。
人差し指と薬指でその部分を広げて、曝け出された濡れたクレバスに中指を滑り込ませる。
「はぁっ! あぁっ、あぁんっ!」
薄い布地一枚とはいえ、あるのとないのとではまるで感覚が違う。より直接的な容赦ない刺激に、あたしの身体が小刻みに痙攣した。
くちゅくちゅと、湿った音が響いてくる。
そこはもう滴り落ちるほどに濡れていて、ひんやりとした冷たさを感じる部分がだんだん下の方に広がっていく。
周囲を取り囲んでいるクラスメイトが、指差しながらくすくすと笑っている。
あたしは恥ずかしくて、ぎゅっと目を閉じた。それでも、耳を塞ぐことはできない。
『うわぁ、あんなに濡れちゃってる』
『ハトってばエッチー』
『やっぱり、ハトの胸って生で見ると迫力あるよねー』
『本気で感じてるよ。ホントにレズだったんだね』
『あの二人、仲いいもん』
『でも知ってる? ハトってば、電車で痴漢に触られてイっちゃうくらいエッチなんだって』
『淫乱なんだ?』
『それは可哀想だって。「感じやすい」って言ってあげなきゃ』
やだ、もう。
なんだかんだ言っても、みんなエッチに興味のある年頃。聖さんに弄ばれて悶えているあたしを、興味深そうに観察している。
その無数の視線は、あたしをさらに昂らせていた。半開きの口からは切ない嬌声が絶え間なく発せられて、教室内に響いていた。
いつの間にか、こそこそとささやくクラスメイトの声はなくなっていた。
聞こえてくるのは、自分自身のエッチな声だけ。
もう、クライマックスが近いのだ。
みんなも、それを感じているのだろう。息を呑んで、じっとあたしたちを見つめている。
聖さんの指の動きが加速する。
あたしの剥き出しの神経を弄ぶ。
「イキそう? ハト、もうイキそう?」
耳元で聖さんがささやく。だけど応えることはできない。
あたしの口は、切ない悲鳴を上げることに精一杯で、他の言葉を発する余裕なんてなかった。
「あぁ……あぁっ。ひっ……くっ、いぃぃっ!」
「イイ? ほぉら、イっちゃいなよ」
「っ――っ! あ……ぁぁぁぁ――っ!」
聖さんの声に促されて、あたしは絶頂を迎える。
そのまま意識を失って、後はなにもわからなくなった。
「う……あぁ……」
我に返ると、あたしは自分のベッドに仰向けに寝ていた。
左手で胸をぎゅっと掴んで。
右手は股間に伸びている。太股が、その手をしっかりと挟み込んでいた。
「あ……あぁ……や、だぁ」
そこはひどく熱を持っていて。
しかも、ぐっしょりと濡れている。
寝返りをうって見てみると、溢れだした蜜はシーツに大きな染みを作っていた。
「や……だ……こんな……」
あたしは言葉を失って、濡れたシーツを見つめていた。ひとりエッチで、こんなに感じてしまったのは初めてだった。
公美さんと出会って以来、自慰でも達することができるようになってしまっていたけれど、今日のはこれまでで一番だった。
しかも。
聖さんをオカズにして、してしまった。
聖さんをオカズにして、最後までいってしまった。
「うわ……ゴメン、聖さん」
思い出しただけで、顔がかぁっと熱くなる。
真っ赤に火照った頬を、両手で挟むように押さえた。
「ゴメンね、聖さん。あたし、全然そんなつもりはないの」
なのに。
こんなに気持ちよくなってしまうなんて。
あたしは何度も、心の中で聖さんに謝った。
親友をオカズにしてひとりエッチをしてしまうだなんて、あんまりだ。
明日、どんな顔をして聖さんに会えばいいんだろう。
今日の明日で、いつも通りに平然と振る舞うのは難しそうだった。
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